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Case Study

ブランドリスク管理の重要性について  ーサントリー社に見る、ブランド毀損と影響と余波【前編】

投稿日:2021年11月10日 更新日:

酒類・飲料メーカーの大手企業であるサントリー社の新浪社長が、経済同友会で会議内に発言した内容が、社会で大きな反響を呼びました。

 

サントリー新浪社長「45歳定年制」発言で炎上…「ちょっとまずかった」

サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は9日、オンラインで開催された経済同友会のセミナーで「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と述べた。

SNS上などで批判が集まったことから、新浪氏は10日の記者会見で「定年という言葉を使ったのは、ちょっとまずかったかもしれない」と釈明。その上で、「45歳は節目で、自分の人生を考えてみることは重要だ。スタートアップ企業に行こうとか、社会がいろんなオプションを提供できる仕組みを作るべきだ。『首切り』をするということでは全くない」と述べた。

新浪氏は、政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めている。

 

(2021/9/11 読売新聞 配信記事)
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210910-OYT1T50260

 

今回の発言についてはネット上で非常に大きな波紋を呼び、SNS等ではハッシュタグ付きでサントリー社に対する不買運動を呼び掛ける動きが広がりました。
発信者が各種メディアで積極的に登場する知名度の高い経営者である分、より反発が強まった傾向があります。

更に、実はサントリー社は1988年にも報道番組内で経営者が一部地域を蔑視するような問題発言を行い、該当地域での大規模な不買運動を引き起こした過去があります。
そのような経緯もあり、現在でも未だにその地域ではサントリー社の商品は敬遠される傾向が根強く残っています。

過去にブランド毀損をした経験を持つ企業をした、再び経営者による問題発言が行われたことでブランドに与えるダメージは、通常の企業以上に大きなものとなることでしょう。

 

なぜならば、サントリー社は過去の失敗から学ぶことができていない企業であると、ステークホルダーから再認識されてしまうためです。

なおかつ、前回の問題発言は一部特定地域での限定的な影響をもたらすものでしたが、今回の問題発言は日本国民全体に影響が及ぶ発言であり、その影響は将来にわたって続く可能性が高いものとなります。

更に、サントリー社の商品を取り扱う企業に対しても、その影響が及ぶ可能性は高くなります。今後、サントリー社の商品を取り扱う小売業などに対して、消費者からクレームが発生する恐れもありますし、飲食店でサントリー社の特約店などは、売上そのものに悪影響が及ぶ可能性が出てきます。

そのため、最終消費者を敵に回してしまったがために、それに携わる商品供給企業からも敬遠される可能性を高めてしまったということです。

つまり、今回の新浪社長の問題発言により、サントリー社は相当に重い、負のリブランディングを行ってしまったことになります。これから徐々に、業績にもその影響が出てくることになるでしょう。

 

これまでサントリー社は、マーケティング・ブランド巧者の企業でした。
複数ある飲料について、顧客セグメンテーションやニーズを細かく捉え、顧客へ向けた新機軸の商品提案など、発信力のあるCM等によって販促を行うことで売上を伸ばしてきています。

40年以上赤字事業だったビールが黒字化したのも、プレミアムビールというセグメンテーションを狙い、顧客訴求を行うことでテコ入れを図ったことが奏功しました。

こちらを3C分析で表すと、下記のようになります。

 

 

ここからうかがえるのは、通常価格帯の市場では通用しない既存ブランドを、競合他社の領域としてはやや手薄である高価格帯でプラチナブランドとして用いることで、サントリー社のビール事業自体をビールの高級ブランドとしてリブランディングすることに成功したということです。

その結果、既存のブランドである「モルツ」自体が活性化され、これまでサントリー社の取り扱いがない飲食店での需要も増加させ、ビール事業全体の業績改善に繋がりました。

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