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Case Study

がんじがらめの状況下でブランドを創り出す。アイフルから読み解くパーパスブランディングの力。

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消費者金融大手のアイフルグループが2022年7月、VIを刷新しました。

アイフルグループ、VI(ビジュアルアイデンティティ) を刷新

~これからの事業展開に情緒的価値を持たせることをデザインで体現。次の50年を見据え、グローバル戦略を実現するためのグループシナジーを創出する~
(2022年7月7日 PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000010009.html

アイフルグループがロゴをリニューアルするのは、マイナーチェンジも含めて「ハートシンボル」「社名ロゴ」のいずれも前例のない初の取り組みです。
アイフルといえば、宝塚の男役で圧倒的な人気を誇った女優が演じる女将シリーズのCM、もしくは愛らしい「チワワ」を思い出される方もいらっしゃるかもしれません。TVやWEBのチャネルにおいて見ない日はないほどです。なぜにアイフルはTVCMを中心としたマスマーケティングに注力しているのか。そしてこの創業55周年のタイミングでVIの刷新を行ったブランド戦略には、どのような意図があったのでしょうか。

業務停止命令から事業再生へ

個人だけではなく事業者ローンや不動産担保ローンといったローン事業、クレジットカード事業、融資の補償事業やベンチャーへの投資など、総合的な金融サービスを行うアイフルグループの中核企業として、カードローン、消費者金融サービスを展開するのがアイフル株式会社、アイフルです。
アイフルは今から約20年前に「くぅちゃん」という白いチワワのタレント犬が出演するCMで話題をさらい、その知名度を幅広い層に一気に広げることに成功しました。しかし経営スタイルが問題となり、2006年に全店舗の業務停止命令を受けるに至りました。これに伴いアイフルは2ヶ月間、プロモーション活動のいっさいを停止。経営は悪化して2010年には3000億円近い大幅赤字となりました。
その後、事業再生ADR手続きにより事業再生を果たし、現在は大手消費者金融の中で唯一、銀行傘下ではない独立系企業として経営を続けています。

「お金」サービスをうたうことの難しさ



1990年初頭、バブル崩壊による一般家庭の経済的困窮、自動契約機の導入、そしてTVCMの場が深夜の時間帯からゴールデンタイムへ拓けたことを背景に、消費者金融サービスは「サラ金」「闇金」といった暗い負のイメージからの脱却を積極的に図りました。しかし、自動契約機の導入やキャッシングという言葉は、人々の日常に「気軽に借りられる」という概念を植え付け、その結果、多重債務者を生み出すこととなり、自己破産が相次ぐなど大きな問題へ発展しました。
これにより2006年からは関連法令の改正が段階的に施行されていきます。
大手の消費者金融業者は適正な金利の引き下げや借入への審査の見直しを求められました。現在、カードローン・消費者金融業者はさまざまな法の規制のもとにサービスを展開しています。
つまり、アイフルのビジネス、サービスは競合他社と差別化することはほぼできません。さらに扱うプロダクトは「お金」であり、ここにも全く差別化のポイントはありません。金利を優遇するサービスで差別化しようにも、そもそも「お金」というものの原価は変わらないので、価格競争をすると業界全体で自分達の首を絞めることにつながります。

また消費者金融と聞いて、前向きなイメージを抱く人は少ないでしょう。顧客にとって「アイフル」を利用していることが感情にマイナスに働くことはあれど、ブランドとして重要な要素である自己実現の価値に決してつながることはありません。「私、アイフルを利用しています!」とInstagramに投稿するような人はいるでしょうか。
よって顧客は「お金を借りる」のはアイフルでもプロミスでも、乗り換えることに対して抵抗を感じません。ブランドに対するロイヤリティを抱くことも考えづらいのです。
商品やサービスで差別化できないのであれば、店舗の立地や契約時の対応などでの差別化を図れるのかというと、それも難しいのが実情です。繰り返しになりますが、「お金を借りる」ということは人にとって「後ろめたい」という心理が働くもので、できれば人に会いたくないからこそ自動契約機の導入があり、そしていくら立地が便利でも、目立つ場所にある店舗への出入りには抵抗があると考えるのが自然ではないでしょうか。

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