ブランド経営戦略コミュニティ 運営会社について
twitter
セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

クラフトボスの「クラフト感」って? ブームだけじゃないヒットの理由

投稿日:2018年3月30日 更新日:

CRAFT-BOSS

2017年4月の発売開始から9カ月で2億4000万本を販売したサントリーのコーヒー飲料「クラフトボス」。クラフトブームにのった商品ですが、ペットボトルを採用して実現した独特のデザイン、オフィスワーカーにマッチしたテイストとボリュームなど、計算しつくされた商品です。ヒットの理由を分析してみましょう。

大手メーカーがてがける「クラフト」商品

日経トレンディ「2017ヒット商品ベスト30」で、2位になった明治の板チョコ「ザ・チョコレート」と6位になったサントリーのコーヒー飲料「クラフトボス」。このヒットには「クラフトブーム」が背景にあります。

もともと手工芸を意味するクラフト。手作り感あふれる家具や玩具は昔からありましたが、近年ではビール、チョコレート、アイス、ハンバーガー、そしてコーヒーにもブームが波及しています。

例えばクラフトビールについては、「小規模」「独立」「伝統的」なビール醸造所で作るビールと定義されています(米ブルワーズ・アソシエーションによる)。

チョコレートやコーヒーなどにおいても小規模専門店が作る手作りの食品と定義すべきですが、明治やサントリーといった大手食品メーカーが手がけ、「ザ・チョコレート」は1年弱で3000万枚、そして「クラフトボス」は9カ月で2億4000万本販売しているわけですから、もう「小規模」とか「手工芸」といった定義はあてはまりません。メーカーの規模や実際に手作りかどうかは問わず「手作り感あふれる商品」を総称したものと考えてよさそうですね。

独特の形状にも理由が

CRAFT-BOSS-packcage

この「クラフトボス」の「クラフト感」ですが、特にパッケージで非常に計算しつくされて表現されているように思います。太くどっしりとしたフォルムの透明な容器は、ヨーロッパの伝統的なガラス瓶を彷彿させます。容器は透明ペットボトルを、ラベルは透明フィルムを採用しているのも、この手工芸的なガラス瓶を表現するためのものと思われます。

2つめは、色です。「クラフト」と聞いて連想するのは、木工の家具やクラフト紙のベージュ色です。クラフト紙を使用した明治「ザ・チョコレート」と同様、「クラフトボス」の外観もベージュです。ラテは中身がベージュですが、ブラックにおいてはラベルのデザインがベージュが基調で、中身がブラックなのでとても映えます。

3つめは手書き調の説明文です。「BOSSは手間を惜しまない」というキャッチコピーから始まる説明文は、スタイリッシュというよりも、むしろ素朴さを感じさせます。
このように、パッケージで見事にクラフト感が表されていると思えます。

ワークスタイルに見事にマッチ

CRAFT-BOSS-image

さて、テイストとボリュームについてはどうでしょうか。「クラフト」というと通好みの苦みやコクが連想されますが、「クラフトボス」はあえて苦みやコクは控えめで、500mlの容量でも飲みやすくなっています。
「クラフトボス」はIT系などのデスクワーカーをターゲットとしていますが、このテイストとボリュームが見事に彼らのワークスタイルにマッチしたといえるでしょう。

「クラフトボス」はブルーカラーが休息時に飲んだり、中高年のサラリーマンが自分を元気づけるために飲んだりする缶コーヒーとは違います。若いデスクワーカーは長時間PCの前に座って作業しつづけなければなりません。160~250mlの缶コーヒーでは一日に何本も買わなければなりませんし、コンビニの100円コーヒーを買いに行く時間もありません。そういったオフィスワーカーが、長時間作業しながらちびちびと飲むには、最適のボリュームなのです。なおペットボトルで蓋を締められるのは、長時間机の上においても衛生的です。

テイストもそうです。一種のエナジードリンクともいえる甘いテイストの缶コーヒーや、苦みやコクの強い本格的なコーヒーは、長時間飲み続けては口の中が甘ったるくなったり、胸がむかむかしてしまいます。クラフトコーヒーなのに苦みやコクが控えめなのであるのは、そういった理由があると思われます。

「こだわり消費」のニーズに応える

10年ほど前から「こだわり消費と割り切り消費の二極化」がいわれてきました。比較的高価格帯の洋服はユニクロなどのファストファッションで割り切るけれども、普段食べる飲料やお菓子にはこだわるという傾向です。この「クラフトボス」も、「こだわる」若者に非常にマッチした商品といえるでしょう。

関連記事

chocoZAPの急拡大を実現した認知とニーズ想起のメカニズム

「来店して5秒で開始、5分で終える」がコンセプトのコンビニジム chocoZAPは、RIZAPグループ株式会社が展開する、24時間365日全店舗使いたい放題で、月額2,980円(税抜)が売りのフィット …

「イノベーションのジレンマ」を「両利きの経営」で乗り切る~コダックVS富士フイルムの事例に学ぶ

時として業界をリードする優秀な大企業が、革新的な技術を持った新興企業になすがままに敗れ去ることがあります。ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授は、このことを「イノベーションのジレンマ」と …

jr

レビットの鉄道衰退論とJR東日本の事業領域拡大戦略

(出典:http://www.jreast.co.jp/suica/whats/) JR東日本は鉄道会社でありながら、流通・サービス、不動産・ホテル、電子マネーまで事業領域を拡大しました。なぜこのよう …

経営戦略を具現化するブランドビジョンの意義  ーセブン&アイ・ホールディングスの中期経営計画を考察【後編】

前編では、下記の図のような一般的な経営の流れについて、ステップ1・2の検証をしてきました。今回はその後編です。 経営計画を立てた後、企業は経営計画を実現するため方法を模索して検討します。これが、経営戦 …

任天堂のWebサイト

任天堂が挑むブランド拡張〜カギとなるのは親しみやすいキャラクター〜

(出典:https://www.nintendo.co.jp/index.html) 世界的なゲームメーカーとなった任天堂。一貫してゲームユーザーのすそ野を広げることを基本戦略としてきました。その過程 …

サイト内検索