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Case Study

ユニクロのポジショニング戦略とは? カギは「割り切り消費」

投稿日:2018年5月25日 更新日:

ユニクロ

カジュアル衣料のユニクロは老若男女を問わずベーシックな商品を提供していますが、決してターゲティング(顧客の絞り込み)を軽視しているわけではなく、カジュアルファッションでは目立ちたくないという層や、洋服は割り切って買いたいという層をうまく取り込んでいます。ユニクロの戦略を探っていきます。

コストリーダーシップ戦略で業界をリード

ユニクロはかつて、2900円のジーンズ、1900円のフリースを売り出し、フリースは年間2600万枚もの売上を挙げました。その後、ヒートテックやブラトップといった機能性の高い商品を売り出したり、ファッション性をある程度打ち出したり、値上げも行いましたが、依然コストリーダーシップ戦略(低価格で圧倒的なシェアを獲得する戦略)で国内カジュアルウェア業界をリードしています。

ユニクロは国民服?

ユニクロは「Made for All」というキャッチフレーズを用いたことがあります。すべての人のために製造されたユニクロ、みんなのユニクロという意味です。

一見それは、マーケティングの要諦ともいわれる「セグメンテーション」(市場の細分化)、「ターゲティング」(顧客のターゲットを絞る)、「ポジショニング」(自社の位置取り)の「STP」を行っていないようにもみえます。性別は男女問いませんし、年齢層は子どもから高齢者まで、国内・海外も問いません。高所得者層を除けば、消費者すべてがターゲットのように思えます。いや高所得者層でも、ユニクロの下着を愛用したり、部屋着用に好んで着たりしているかもしれません。

過度なまでに個性のないともいわれるデザインは、消費者の最大公約数を取ったデザインのようにもみえ、柳井正社長のいうところの「国民服」を目指しているようにもみえます。

差別化という名の罠

確かにユニクロの戦略は過度な差別化を行う企業に対する教訓であると思われます。現代の多くの企業は、自社の商品がコモディティ化(低価格の汎用品化)・同質化するのを恐れ、過度にセグメンテーションを行い、ターゲットを絞り、特異なポジショニングを取って、結果ボリュームの少ない市場で戦って売上が上がらないという悪循環に陥っているようにも思えます。「STP」戦略で見落としがちなのは、市場のボリュームです。

その点で、老若男女ほぼすべてを対象としたユニクロは、現代商品戦略の盲点を突いた戦略をとっているともいえるでしょう。

ZARAとは正反対の戦略

しかし、一部の識者がいうような、ユニクロは「市場とターゲット、ポジショニングをあえて絞らない」という指摘は正しくないのではないでしょうか。ユニクロはH&M、ZARAなどと競合するといわれますが、実際はポジショニングが異なります。むしろ正反対といえます。

H&MやZARAは多品種少量生産で、商品リードタイムが短く、流行やトレンドに応じて商品を投入できます。商品のラインアップも非常に多いです。ファストファッションの代表格です。

一方、ユニクロは、少品種大量生産であり、商品はより安く、品質も安定しているものの、商品リードタイムは長く、流行やトレンドを追ってはいません。「スローファッション」とも呼ばれるゆえんです。商品アイテム数もZARAやH&Mに比べて10分の1ともいわれます。

「割り切り消費」に応える

当然、ターゲットも異なります。ユニクロの消費者像は、ファッショナブルよりベーシック、「こだわり」より「割り切り」といえます。
「ベーシック」で「割り切り」というと、ファッションに鈍感、没個性、どちらかというと低所得者層と思われがちですが、違います。日本人の特性として、ファッションはあえて目立ちたくない、無難な方がいいという考え方が多いです。「服に個性があるのではなく、着る人に個性がある」(柳井社長)と考えている人も多いでしょう。

そして「消費」に関しては、「こだわり消費」と「割り切り消費」の二極化という動きがあります。日常的なアイテムは割り切って考えても、自分のアイデンティティに関わるアイテムはこだわっていく、そういう考え方です。ですから「勝負服」は高級ブランドから選んでも、普段着はユニクロでいいと考えている人も多いと思われます。

無印良品との共通点

こうみてみると、以前コラムで紹介した、「これがいいよりも、これでいい」というメッセージを発している無印良品との共通点がうかがえます。老若男女すべての人に対して、あえて個性を前面に出さない商品を提供し、消費者に「これでいい」という合理的な判断をしてもらうこと。ユニクロも無印良品も、市場のボリュームゾーンを狙いながらも、しっかりとポジショニングしているのです。

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