
「お、ねだん以上。」のキャッチコピーで知られる家具・ホームファッションの専門店「ニトリ」。郊外に大型店舗を多く出店して成長を続け、30期連続で増収増益を達成しています。2017年3月15日には銀座、目黒、池袋で店舗を同時オープンし、都心部への出店も目立っています。今回はニトリについて解説します。
ニトリのルーツ

※写真はイメージです。
1967年に創業者であり現会長である似鳥昭雄氏が札幌に開いた「似鳥家具店」がニトリのルーツです。オープンから数年間は経営に行き詰まっていましたが、ターニングポイントになったのは、似鳥氏が家具研修セミナーに参加するために渡米したことでした。
アメリカの家具が、日本と比べて高品質で低価格なうえ、消費者のこともよく考えられていることに衝撃を受けたそうです。この渡米をきっかけに、日本人の生活をより豊かにしたいという思いが強くなり、下記のニトリの企業理念である「ロマン」にもつながりました。
「ロマン」を原点に、「ビジョン」の実現をめざし続けます。
ニトリは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマン(志)を社員一人ひとりが企業行動の原点として共有しています。そして、社員の力を結集して長期ビジョンの実現に全力を尽くすことを企業活動の指針と位置づけています。ロマンを原点に、ビジョンを実現していくことで、ニトリはお客様をはじめとしたステークホルダーの皆様とともに多様な豊かさを分かち合っていきたいと考えています。
その後、ニトリは1972年に掲げた100店舗で売上高1,000億円という「第1期30年計画」を2003年に達成、2015年には400店舗、売上高4,000億円を達成し快進撃を続けています。
「お、ねだん以上。」を実現するビジネスモデル
「お、ねだん以上。」のキャッチコピーが表すように、「良いものを安く」提供するのがニトリのウリですが、これを可能にしているのが、ニトリが採用しているビジネスモデル「SPA」。
SPAとは、「specialty stores of private label apparel」の略で、主にアパレルメーカーが企画・デザインから物流、販売までを自社内で行うことを指し、GAPやユニクロが導入していることで有名です。
今までの家具業界では仕入れた商品を販売するのが一般的でしたが、ニトリでは企画からデザイン、製造、商品モニター、物流、販売までを行うことでコストを削減し、大きな営業利益を確保することができているのです(2016年の営業利益率は15.9%)。
ニトリのビジネスモデルについて詳しくはニトリ読本へ

ニトリの顧客層
リーマンショック後は値下げが進んだ影響で、年収200万から500万の顧客層が中心でしたが、2013年頃からは年収800万ほどの顧客層をターゲットにしています。また都心部への出店で、それまで中心だった30代、40代だけでなく20代や50代以上も増え、「お、ねだん以上。」の商品は、幅広い層に受け入れられています。
顧客のニーズがビジネスチャンス
日本経済新聞社と日経広告研究所が2015年に行なった「第28回日経企業イメージ調査」という流通関連企業のイメージランキングで、ニトリは「顧客ニーズへの対応に熱心」で1位、「研究開発力・商品開発力が旺盛」で4位を獲得しています。
顧客のニーズを発見して対応できているということは、自ずとビジネスチャンスを掴んでいるとも言えます。似鳥氏は次のように話します。
よく、「ヒット商品を連発できる秘訣は?」と聞かれますが、お客の不平、不満、不便を探すこと。これに尽きますよ。
たとえば、お風呂から上がった時に使う『珪藻土バスマット』を開発した時は、繊維素材だと足裏がべたつくのが嫌だという不満があった。
また、珪藻土バスマットという商品はニトリが出すより先にすでに市場に存在していましたが、従来品は価格が1万円、2万円と高額だった。
こういう不満を見つけた時こそチャンスで、私は思わず嬉しくなっちゃって、「うちが安い価格で売り出せれば、すごく売れるな」と見えるわけです。
(中略)
ただ、こんなときも自分たちが儲けようと思って価格をつけると、必ず失敗しますよ。自分でも買える価格にする、というのがポイント。

ニトリで実際に販売されている『珪藻土バスマット』
常日頃、似鳥氏が自身に言い聞かせているという「先客後利」という顧客の利益を優先するという考え方が、このような商品開発や価格設定へとつながっているのです。
今回はニトリについて見てきました。その成功の背景には「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という創業者似鳥昭雄氏の一貫したロマンがありました。改めてコンセプトの大切さをご理解いただけたのではないでしょうか。是非、参考にしてみてください。