セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Branding Method Case Study

日本を代表する印刷会社が「印刷」の二文字を外した意味

投稿日:2024年3月10日 更新日:



引用元

「印刷会社」から「世界中の課題を突破する会社」へ!
社名に込められた新たなブランド・アイデンティティとは?

2023年10月1日。大日本印刷株式会社(通称:DNP)と並び、日本の印刷会社の二大巨頭と言われた「凸版印刷株式会社」は、社名を「TOPPAN」と改めました。明治33年、当時の最新鋭印刷技術「エルヘート式凸版法」にあやかって命名された凸版印刷株式会社は、関東大震災や第二次世界大戦、高度経済成長、バブル崩壊などを乗り越えてきました。そんなTOPPANは、実は昔から印刷事業一本だったわけではありません。デジタル技術が急速に発展するなど、激動の時代の中で社会が求めているニーズを敏感に察知し、着実にノウハウを積み立ててきました。そして今、社名から「印刷」の二文字を外し、世界中の課題を突破する挑戦をはじめました。


<ブランド・アイデンティティとは?>
自社ブランドとして、ターゲット(顧客やステークホルダー)にどう思われたいかという旗印となる言葉を表します。

<ブランド・アイデンティティの例>
■サードプレイス(スターバックス)
■前向きな楽しい気分にスイッチする炭酸飲料(コカ・コーラ)
■第二の我が家(リッツカールトン)
■生活の中の楽しみをつくる美容室(りんごの木)

<ポイント>
■ブランド・アイデンティティは、キャッチコピーではないため、奇をてらった言葉やインパクトのある言葉を使うことはありません。
■顧客が好感を抱けて、かつ社員が顧客に対してどのように振る舞えばよいかイメージできることが望ましいです。

単なる名称の変更を超えたブランド体験設計


引用元

「凸版印刷」から「TOPPAN」への社名変更は、単なる名称の変更を超えて、DXやSDGsなど現代の市況感や機会に対応するための戦略的な決断であると言えます。事業の多角化、グローバル競争力の強化、デジタルとサステナビリティの統合、組織の柔軟性と革新性の向上、顧客との新たな関係構築、そして印刷からデジタルに移り変わる時代における新たなブランドイメージの確立という、複数の戦略的・戦術的要素を網羅しています。そのことを社会に印象付けるため、「すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN」というキャッチコピーを掲げました。ブランドサイトの立ち上げをはじめとして、タレントを起用したTV-CMやラジオコンテンツの配信など大々的なPR活動を展開しています。


<ブランド体験とは>
ブランド・アイデンティティを軸としてブランドの世界観を表現するための具体的な取り組み。(戦術やSNS戦略など)

「世界中の課題を突破する会社」
■印刷の分野で培ったノウハウを中小企業のDX化を提案
■メタバースなどの最新分野への進出
■グローバル化
■上記を社内外に伝え、ブランドを浸透させる徹底したプロモーション

このように、ブランド・アイデンティティを軸に一貫した戦略・戦術を設計していることが分かりますね。

事業を通じて世界中の課題を解決することを目指すTOPPAN。その課題とは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「フードロス」「医療・ヘルスケア」「キャッシュレス」「メタバース」「文化財保全」の6つの他、教育格差や高齢化社会、環境問題などへの取り組みも見据えています。例えば「DX」で言えば、効率の良い印刷システムの追求や工場内のエレクトロニクス開発で、ノウハウが蓄積されていました。今後は中小企業など職場環境にDX化が行き届いていない会社に向けて、新たな働き方の提案を行っていくという狙いがあります。これまで培ってきたノウハウや強みを活かし、印刷業の枠を超えた新たな価値創出に取り組んでいくのです。

まとめ

■「ブランド・アイデンティティ」とは、自社ブランドとして、ターゲット(顧客やステークホルダー)にどう思われたいかという旗印となる言葉。
■「ブランド体験」とは、ブランド・アイデンティティを軸としてブランドの世界観を表現するための具体的な取り組み。(戦術やSNS戦略など)

今回の社名変更を契機に、技術革新と社会貢献を軸に多様化する市場ニーズに応える包括的なデジタルイノベーション企業へと進化を遂げています。グローバル競争力の強化、組織の柔軟性と革新性の向上、そして顧客との新たな関係構築に向けた取り組みは、企業が直面する現代の課題に対して積極的に挑戦していることを示しています。「ブランド・アイデンティティ」を定義し、それに沿った戦略・戦術を展開しているのです。軸が定まっているからこそブレることのない経営判断が可能です。TOPPANはこれからも多様な事業を通じて新しい価値創造と顧客や社会の持続可能な発展に貢献していくことでしょう。





CBOメディア&ラボ【ブランディング推進のための情報メディア】

【経営×ブランディングの責任者(CBO)を日本で増やす】経営に貢献する真のブランディングを広めるために、ブランドづくりの基礎知識・ポイントからさまざまな事例、そして実践的に学べるセミナー、相談会まで。幅広いメニューで社会にCBOを増やしていきます。
※一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会公認
最新情報を発信しています。






■千田 新(ちだ あらた)執筆
クリエイティブアソシエイト・コピーライター

関連記事

マクドナルドとモスバーガー

マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?

モスバーガーHPより マクドナルドHPより   ポジショニングはフィリップ・コトラーが提唱したマーケティング手法であるSTPマーケティング(「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショ …

コロナ時代 ブランドの「選択と集中」で経営革新 <後編> ~資生堂 パーソナルケア事業ブランドを売却~

前編では、資生堂の日用品(パーソナルケアブランド)事業の売却は、「選択と集中」によるブランド戦略展開であるという結論付けを行いました。後編では、「選択と集中」というブランド戦略が正しいのかを検討してい …

住みたい街ランキングの陰に「沿線ブランド」の力あり~阪急電鉄の沿線ブランディング~

近年、さまざまなメディアで「街の人気」が話題になっています。それをテーマにして、街の不動産屋さんを主人公にした漫画やドラマまで現れるほどです。街の人気は地域経済に多大な影響を及ぼすものですから、企業に …

RIZAPのブランド価値向上経営への挑戦 のれん代とブランド価値

前期まで急成長を続けてきたRIZAPが、2019年度決算を発表しました。 ライザップ決算、193億円の赤字。膨れ上がったグループ企業の”ダイエット”は最小限にとどまる 個別指導のトレーニングジムなどを …

chocolate_cake2

1つ3000円のガトーショコラでわかるブランディング術

イタリアンレストラン・ケンズカフェ東京の「特選ガトーショコラ」は、縦6㎝横13㎝高さ5㎝ほど。この小ぶりなスイーツは3000円という高値でありながら、お取り寄せで飛ぶように売れているのです。今回はその …

サイト内検索