「印刷会社」から「世界中の課題を突破する会社」へ!
社名に込められた新たなブランド・アイデンティティとは?
2023年10月1日。大日本印刷株式会社(通称:DNP)と並び、日本の印刷会社の二大巨頭と言われた「凸版印刷株式会社」は、社名を「TOPPAN」と改めました。明治33年、当時の最新鋭印刷技術「エルヘート式凸版法」にあやかって命名された凸版印刷株式会社は、関東大震災や第二次世界大戦、高度経済成長、バブル崩壊などを乗り越えてきました。そんなTOPPANは、実は昔から印刷事業一本だったわけではありません。デジタル技術が急速に発展するなど、激動の時代の中で社会が求めているニーズを敏感に察知し、着実にノウハウを積み立ててきました。そして今、社名から「印刷」の二文字を外し、世界中の課題を突破する挑戦をはじめました。
<ブランド・アイデンティティとは?>
自社ブランドとして、ターゲット(顧客やステークホルダー)にどう思われたいかという旗印となる言葉を表します。<ブランド・アイデンティティの例>
■サードプレイス(スターバックス)
■前向きな楽しい気分にスイッチする炭酸飲料(コカ・コーラ)
■第二の我が家(リッツカールトン)
■生活の中の楽しみをつくる美容室(りんごの木)<ポイント>
■ブランド・アイデンティティは、キャッチコピーではないため、奇をてらった言葉やインパクトのある言葉を使うことはありません。
■顧客が好感を抱けて、かつ社員が顧客に対してどのように振る舞えばよいかイメージできることが望ましいです。
単なる名称の変更を超えたブランド体験設計
「凸版印刷」から「TOPPAN」への社名変更は、単なる名称の変更を超えて、DXやSDGsなど現代の市況感や機会に対応するための戦略的な決断であると言えます。事業の多角化、グローバル競争力の強化、デジタルとサステナビリティの統合、組織の柔軟性と革新性の向上、顧客との新たな関係構築、そして印刷からデジタルに移り変わる時代における新たなブランドイメージの確立という、複数の戦略的・戦術的要素を網羅しています。そのことを社会に印象付けるため、「すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN」というキャッチコピーを掲げました。ブランドサイトの立ち上げをはじめとして、タレントを起用したTV-CMやラジオコンテンツの配信など大々的なPR活動を展開しています。
<ブランド体験とは>
ブランド・アイデンティティを軸としてブランドの世界観を表現するための具体的な取り組み。(戦術やSNS戦略など)「世界中の課題を突破する会社」
■印刷の分野で培ったノウハウを中小企業のDX化を提案
■メタバースなどの最新分野への進出
■グローバル化
■上記を社内外に伝え、ブランドを浸透させる徹底したプロモーションこのように、ブランド・アイデンティティを軸に一貫した戦略・戦術を設計していることが分かりますね。
事業を通じて世界中の課題を解決することを目指すTOPPAN。その課題とは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「フードロス」「医療・ヘルスケア」「キャッシュレス」「メタバース」「文化財保全」の6つの他、教育格差や高齢化社会、環境問題などへの取り組みも見据えています。例えば「DX」で言えば、効率の良い印刷システムの追求や工場内のエレクトロニクス開発で、ノウハウが蓄積されていました。今後は中小企業など職場環境にDX化が行き届いていない会社に向けて、新たな働き方の提案を行っていくという狙いがあります。これまで培ってきたノウハウや強みを活かし、印刷業の枠を超えた新たな価値創出に取り組んでいくのです。
まとめ
■「ブランド・アイデンティティ」とは、自社ブランドとして、ターゲット(顧客やステークホルダー)にどう思われたいかという旗印となる言葉。
■「ブランド体験」とは、ブランド・アイデンティティを軸としてブランドの世界観を表現するための具体的な取り組み。(戦術やSNS戦略など)
今回の社名変更を契機に、技術革新と社会貢献を軸に多様化する市場ニーズに応える包括的なデジタルイノベーション企業へと進化を遂げています。グローバル競争力の強化、組織の柔軟性と革新性の向上、そして顧客との新たな関係構築に向けた取り組みは、企業が直面する現代の課題に対して積極的に挑戦していることを示しています。「ブランド・アイデンティティ」を定義し、それに沿った戦略・戦術を展開しているのです。軸が定まっているからこそブレることのない経営判断が可能です。TOPPANはこれからも多様な事業を通じて新しい価値創造と顧客や社会の持続可能な発展に貢献していくことでしょう。
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■千田 新(ちだ あらた)執筆
クリエイティブアソシエイト・コピーライター