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Case Study

がんじがらめの状況下でブランドを創り出す。アイフルから読み解くパーパスブランディングの力。

投稿日:

アイフルを、第一想起されるブランドに。



画像;アイフル プレスリリースより
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000010009.html

お客様がいざ「お金を借りよう」となったとき、まっさきにアイフルのことを思い浮かべてもらう、つまり第一想起されなければ、広告をする意味はないのです。
(阿部 育生氏 アイフル株式会社 宣伝課 課長アイフル RECRUITING INFORMATION)
http://aiful-recruit.wjosaka.biz/fresh/works/people/abe.html

ブランディングは差別化によって、その企業や商品・サービスの価値を高めることです。ところがブランド価値によって、顧客のロイヤリティを高めることも、他社との差別化を明確に打ち出せないのであれば、あとはひたすら「アイフル」イメージをターゲットと市場に対し、演出し積み上げていくしかありません。
信頼感や安心感のイメージ醸成のために、有名俳優の起用、力強く印象的なキャッチコピーを打ち出す。クリエイティブの力を最大限に活かしたCM展開は、強いインパクトをもって消費者の日常に浸透し、2021年度の企業別CM好感度 獲得効率で1位となりました。(「CM総合研究所調べ」)
(参照;https://www.cmdb.jp/news/release20220415/)



キャッチコピー、「愛がいちばん。」はアイフルが提供するサービスの根幹に「お客さまへの愛」があることを表現し、同時に「“アイ”フルが業界で“いちばん”になる」といった志も込められた、記憶に残りやすく、かつ、社名の「アイ」に基づいた他社が真似できないブランド要素になり得ています。

認知そして共感へ。



画像;アイフル プレスリリースより
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000010009.html

アイフルグループでは創業から50年以上にわたり、企業シンボルとして安心感や誠実さを象徴するハートマークを用いてきました。このたびのVI変更は、ハートマークに込められた思いを継承しながら、この先の50年を見据え未来に新たな情緒的価値を提供していく企業姿勢にふさわしいイメージへのアップグレードを行うものです。
(2022年7月7日 PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000010009.html

認知度の向上を目的にマスコミュニケーションに力を入れてきたアイフルが行ったVIの刷新、そこには表層的なリブランディングではなく、企業の思いをステークホルダーへと浸透させていく「パーパスブランディング」への取り組みが感じられます。

「個別の事象で課題を解決していくのではなく、企業や組織の根幹となる拠り所=「パーパス(存在理由)」を見つけ、究極的にはそれひとつで判断・行動をし、課題を解決していくこと」。
パーパスは、なぜそれをやっているのか、何のためにやるのか、という明確かつシンプルな本質を突き詰めたものです。

パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える  
齊藤 三希子 (著)

これまでのVUCAの時代に加え、2020年にはコロナ禍という、人々の価値観を揺るがし、個人それぞれが自分のあり方を見つめ直さざるを得ないような出来事が起こりました。
ただ、ターゲット市場で一番に想起されるブランドを目指すだけであれば、これまで通り、ひたすらTVやWEBで社名やコピーを連呼したり、インパクトのある発信を行っていればよいでしょう。しかしそれには多大なコストもかかり、また常に移ろいやすい時代のトレンドを追いかけ続けなければならず、クリエイティブへの投資は尽きることがありません。さらにはまたいつ、消費者金融の業界ルールの変更が意図せぬところで起きるとも限らず、プロモーションを打てない事態がやってくる可能性もゼロではありません。

アイフル経営理念

「誠実な企業活動を通じて、社会より支持を得る」

https://www.ir-aiful.com/jp/policy/management_philosophy.html

アイフルが目指す情緒的価値というのは、アイフルが社会に対して存在する意味、その志への共感です。またパーパスへの共感は自社の顧客だけに求めるものだけでもありません。アイフルの消費者金融というビジネスモデルには「お金を借りることは、できればしたくない」という深い顧客のインサイトの壁があり、それはアイフルの組織内に所属する人や関係者でも例外ではありません。
自分の所属する組織が何のために社会に存在しているのか、その思いを共有することにより、一貫した行動や意思決定が行われ、統一したイメージがブランドを創り出していく。加えて業界に染み付いた負のイメージを少しでも払拭していきたいという想いがあるに違いありません。

アイフルに限らず、これからの企業、製品、サービスにおいてブランディングの要素のひとつとして、物事の本質、「Why」に対する明確なメッセージは欠かせないものになってくることでしょう。

マーケティングの4Pに新しいPを追加しました。
ご存知の通り 4Pはマーケティングプランの構成要素、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)です。 そして私が追加した5つ目のPは「パーパス(Purpose)」です。
(フィリップ・コトラー2013年3月15日JREグループ機関施設訪問)
https://www.smo-inc.com/blog/brand-stories/267

参考サイト
https://aiful-recruit.com/fresh/group/society.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/アイフル
https://ja.wikipedia.org/wiki/消費者金融
https://www.moshi-moshi.jp/work/post_4060
https://creatorzine.jp/news/detail/1032
https://mba.globis.ac.jp/careernote/1046.html
事業再生ADRの事例その1【アイフルは大丈夫?】
事業再生ADRの事例その2【アイフルのマーケティング】
CM総研 広告主インタビュー アイフル株式会社
「そこに愛はあるんか?」 アイフルがCMで「愛」を問い続ける理由

 

 


■三重野 優理(みえの ゆり)執筆

グラフィックデザイナー・アートディレクター/学士(芸術)/MBA 経営学修士(専門職)

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