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Case Study

ふるさと納税による地域ブランディング ーフレーム「ブランド・アイデンティティ・プリズム 」からの考察【前編】

投稿日:2022年3月10日 更新日:

名水については、大手コンビニエンスストアチェーンであるファミリーマートでも商品が販売されています。

宮崎県霧島の天然水 600ml

霧島山系の地層が磨き上げた美味しい水です。シリカを66mg/L含んだ、硬度:150mg/L の中硬水です。

(ファミリーマート ホームページ)
https://www.family.co.jp/goods/drink/4251903.html

 

お茶については、世界的なお茶ブームに合わせて日本国内だけでなく世界に対しても商品出荷額を伸ばしています。

霧島茶とは?3年連続日本一に輝いた鹿児島のブランド茶をご紹介!

(日本茶マガジン ホームページ)
https://nihoncha-magazine.com/?p=163

昔は霧島茶というのはブランド力が不足しており、他のお茶とのブレンド用に使われることが多く、一般的な銘茶の産地と比較しても競争力が欠けているという時期がありました。

お茶は霜が大敵で、霜が降りるとお茶の木がダメになってしまいます。元々霧島地域は冷涼な気候であったのですが、霜の存在が品質の安定性やお茶の生産量にも影響を与えてしまっていたのです。

そのため商品単価も低くなりがちで、かつてはお茶の農家経営には厳しい状況があったようです。

しかしながら、近年の経営者は最新技術を導入し、霜を上手く回避した上で、地域の特徴である霧の存在を味方につけて、霜が降りることを防ぐことに成功しました。

その結果、元々の高い品質を維持しながら安定性をもって生産できるようになり、霧島茶のアピールに集中できるようになったのです。

現在は霧島ブランドを広めるべく広報活動を強化しており、地域全体の活性化と農家の増収にもつながり、ブランドで収益を改善するという 成果を上げています。

このように、都城市と霧島地域は、地域ブランディング戦略としては非常に成功している地域だと言えるでしょう。

この都城市がある霧島地域と後述の高千穂地域の試みについて、フレームワークでまとめてみたいと思います。用いるフレームワークは、「ブランド・アイデンティティ・プリズム 」です。
「ブランド・アイデンティティ・プリズム 」は、フランスのビジネススクールHEC経営大学院のジャン・ノエル・カプフェレ教授が開発したフレームワークです。

フレームワークとしては、6項目を組み合わせて結論を導き出します。
各項目の内容は、下記の通りです。

①Physique:物理的に識別されるブランドの側面

ブランドを象徴するデザインや配色、マスコットキャラクターなどです。
マクドナルドで例えると、ドナルドというキャラクターや企業のロゴマークなどが挙げられます。

②Relationship:ブランドをシンボライズする対人相互関係

ブランドと顧客との関係性を可視化したものです。
一般的には、顧客とのポジティブな感情を呼び起こすシンボルマーク等を用います。

③Reflection:消費者を代表する人たち

ブランドを最も多く利用・消費する人の、人物像を表しています。
マーケティングにおけるターゲット顧客であり、ペルソナに該当するものです。

④Personality:ブランドの個性

ブランドが外部環境とどのようにコミュニケーションをとるかを表しています。
主にキャッチコピーやサウンドロゴ、またはイメージモデルなどの広告です。

⑤Culture:ブランドが行動規範とする価値体系と基本原則

ブランドを構成する文化は、企業や組織の影響を受けます。
昨今では、SDGsやESGの概念を持たせてブランド価値を示すことが増えています。

⑥Self-image:消費者が想起する理想の自分

顧客がブランド・企業に接したり思い出したりしたときに抱く自身のイメージのことです。
このイメージを良好なものに変えるために、ブランド戦略や顧客への販促を行います。

これらを基に都城市のブランド・アイデンティティ・プリズム を作成したところ、下記のようになりました。

都城市は、霧島地域と高千穂地域が著名なので、この二大ブランドを用いて、ふるさと納税の返礼品を拡充させており、ふるさと納税金額No.1となることで、都城市のブランド・イメージを高めることに成功しています。

特に霧島地域は前述の通り、都城市を牽引する存在です。焼酎の黒霧島によって、霧島という地名は全国区であり、海外にすら霧島という地名は知られる存在になりつつあります。

高千穂地域では、知名度の高い神社も多く、温泉などの観光に適したものも複数あり、風光明媚で素晴らしい場所なのですが、現状では残念ながら、やや影の薄い存在です。

霧島地域のように高千穂地域のブランドを強化させるには、どのようにすれば良いのでしょうか。

そこで後編では、高千穂地域のブランディング戦略を検討してみます。

 

 

 

 


■武川 憲(たけかわ けん)執筆

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 エキスパート認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。
現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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