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ウィーワークの蹉跌 上場寸前でのブランド毀損

投稿日:2019年12月2日 更新日:

アメリカのシェアオフィス大手「ウィーワーク」を運営する「ウィーカンパニー」は、アメリカ国内を中心に全世界で2400名の人員削減を実施すると発表しました。削減数が全従業員のおよそ2割に相当する大規模なリストラ策となります。

同社は、急激な事業拡大の反動で大幅な赤字を計上するなど資金繰りが悪化しており、出資を受けている「ソフトバンクグループ」から1兆円規模におよぶ追加の資金支援を受けるなど、先行きが不透明な状況が続いています。

そのため、創業者が代表権を返上するなどの改革策を実施中で、さらなる施策の一環として今回の削減を決定したようです。

2019年11月22日 不景気.com
シェアオフィス運営の「ウィーワーク」が2400名を削減へ、2割相当

ソフトバンクグループが出資する、有力ベンチャー企業と期待されていたウィーワークにて、上場寸前に経営を巡る混乱が発生し、経営の先行きが危ぶまれる状況となっている。

新規公開株は、通常は上場時の初値が公募価格を上回り、華々しいスタートを切ることが多い。公募価格と初値の差額は、そのまま市場や投資家からの、その企業に対する期待値であり、ある意味その企業のブランド価値を金額として表したものとも言える。そのため、上場時の初値は、市場へのコーポレートブランドのアピールとして、非常に大事な意味をもつ。

現在、アメリカの株式市場は高値が続いている。その中で新規上場を行うのであれば、初値が公募価格を上回るのは、ほぼ当然であり、当たり前という状況である。

しかしながら、今回のウィーワークは、上場寸前で企業内でのトラブルが発生してCEOが辞任に追い込まれるなど、経営問題が大々的に報道されたことで、上場自体が一旦延期となっている状況である。結果として資金調達に苦しむこととなり、なおかつ出資元であるソフトバンクグループもウィーワークのブランド毀損によって、企業価値金額を減額せざるを得ず、赤字を計上する一つの要因となってしまった。

このように、コーポレートブランドの毀損は経営へ与える影響も大きく、特に新規上場を目指す企業においては、経営危機を招く要因とすら、なりかねない。ウィーワークは、果たして再生を果たし、再上場ができるのかが気になるところである。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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