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Case Study

パワースポットという地域資源を用いた「茨城県」の新たなブランディングを考察する

投稿日:2019年4月10日 更新日:

埼玉県を徹底的に揶揄しつつ、千葉県との壮絶な争いと東京への憧憬を描いた内容で話題となった、映画『翔んで埼玉』が大ヒットとなりました。地域に及ぼす影響も大きく、映画に登場した埼玉銘菓は、注文が数倍になっているという報道もあるようです。

同様に『お前はまだグンマを知らない』という漫画では、群馬県を同様の手法で“ディスった”内容が受け、テレビドラマ・映画・アニメにもなるヒット作となっています。また、近隣の栃木県は群馬県の競合として、テレビのバラエティー番組などで取り上げられる機会も増えており、『ススメ! 栃木部』などのコメディ漫画も出てきています。

そのような関東ローカル県での話題が盛り上がるなか、ひたすらに地味な存在として扱われてしまっている、関東の地域があります。それは、茨城県です。

もちろん、茨城県も、大洗町でアニメの「ガールズ&パンツァー」とコラボレーションイベントを開催し、テレビドラマの撮影を誘致するなど、地道な努力は続けています。

しかしながら、47都道府県の魅力度を示す地域ブランド調査では、6年連続9度目の最下位となっているように、残念ながら現況では「茨城県」の魅力が十分には理解されにくい状況となってしまっています。

茨城県の注目パワースポット「御岩神社」

しかしながら、現在、この茨城県でにわかに注目を浴びている地域があります。宇宙飛行士たちが地球上の「御岩(おいわ)神社」の場所から「光の柱」を見たということでSNSやネットで話題となり、日本でも最強クラスのパワースポットといわれるようになったことで、日立市の「御岩神社」への観光客が急増しているのです。

この「御岩神社」ですが、駅からかなり離れた山奥にあり、公共交通機関はバスのみで40分前後かかります。また、バスの本数も少なく、観光のアクセスとしては非常に不便な場所です。

それにも関わらず、御朱印ガール・スピリチュアルブームの影響や前述のSNS・ブログの口コミにより、年齢を問わず「神仏が好き・興味がある」人の訪問が増加し、御岩神社は一躍人気スポットとなりました。この影響を受けて、神社近辺の駐車場が年々と拡大されており、現在は観光需要の拡大により、大型観光バスも停車できる駐車場を3か所設けています。この設備投資により、観光客向け需要を狙った飲食・物産関連施設が新たに建てられるなどの相乗効果を生み、活況を呈してきています。また、御岩神社の公式ブログも開設されており、昨年3月から投稿が始まっているようです。

現在では、登山が必要な山奥の神社の祭礼に、参加条件を制限したなかでも60人もの人が集まるようになりました。このイベントについても、数年前までは、数人程度しか参拝客がいなかったそうです。

この御岩神社は「御岩山」に立地しています。通常は神社で祭られる神様の数は1~3柱ですが、御岩神社は188柱。大国主命(オオクニヌシノミコト)や伊邪那美命(イザナミノミコト)など、高名な神様が多数祀られています。そのため、一度の参拝で日本のほぼすべての神様にお参りすることと同じご利益が得られるのです。

実は188の神様は山全体に祭られており、山自体がご神体となっています。頂上まで登るとさらにご利益があるといわれております。しかし、標高は530メートルと高い山ではありませんが、道は舗装されておらず、大岩などの障害や勾配がきつい箇所も多いため、軽い登山を行う覚悟が必要となります。

茨城県はパワースポットの宝庫

実は、茨城県はこのようなパワースポットと呼ばれる地域が非常に多い県です。

霊峰3000年の歴史をもつ「筑波山神社」に、神が降臨したと伝えられる「大洗磯前(おおあらいいそさき)神社」。日本三大稲荷の「笠間稲荷神社」も存在し、宝くじの当たる神社として有名な「酒列磯前(さかつらいそさき)神社」。全部にお参りすることで伊勢神宮への参拝に匹敵するご利益があるといわれる、東国三社のうち「鹿島神宮」「息栖神社」の二つの神社は茨城県にあります。更に、出雲大社より分祀した「常陸国 出雲大社」までもが存在するという、至る所にパワースポットが点在する、実はとても神秘的な県です。

実際に、有名旅行会社でも茨城県内のパワースポットを巡る旅は好評のようで、定期的にツアー募集がかかっています。このツアーには、前述のSNSやブログを見た「神仏が好き・興味がある」というお客様が、年齢を問わずに多数参加する活況となっています。
これに合わせて、観光スポットとなった茨城県の各神社では工夫をこらし、神社を改装してトイレを整備したり、お守りのデザインや種類を増やしたり、御朱印の受付時間・日程を増やしたりするなど、観光客向けにサービスを拡充させています。

元々、神社への参拝後には、神社近隣のお店で飲食をするという「直会(なおらい)」という風習がありましたが、この神社ブームの影響を受けて、近隣に飲食店も増加する傾向が出てきております。結果として、徐々に人気の観光スポットに神社が変貌しつつある状況です。

茨城県のブランド価値向上の可能性

老若男女問わずの御朱印ブームを受け、最近では本来保守的であると思われる神社仏閣ですら、参拝客向けに屋内にカフェスペースを設けたり、期間限定のお守りなどの開運グッズを豊富に用意したりするなど、新たな集客を図っています。東京の神田明神では、文化交流館というコンサートもできる多目的ホールと、東急ハンズの神社版のような神社グッズを多数販売するコーナーや、オリジナルカフェスペースまで設置された商業施設が、神社内に併設されているような状況です(ちなみに、ここで販売されているソフトドリンクでは「神社声援(ジンジャーエール)」という飲み物まで販売されています)。

近年の不安定な世相を反映したスピリチュアルブームの再興もあり、茨城県もこの地政学上の利点を活かせば、新しいかたちで県の魅力を発信し、観光客を集客できる可能性が高いと思われます。他県との差別化を狙うためには、自虐的な手法ではなく「未踏のパワースポット」というようなかたちで、県全体のブランド価値を高める方法も、十分検討の余地があるでしょう。それこそ、茨城県は神仏のご加護を得られるかもしれません。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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