BMW傘下のMINIが2018年3月、ロゴを18年ぶりに変更しました。「フラットデザイン」というデザイン様式を採用したロゴには、どんな思いが込められているのでしょうか。考察してみました。
「フラットデザイン」に込めた思い
1959年に英国車として登場、ザ・ビートルズのメンバーらセレブリティにも愛され、1994年にドイツBMWの傘下になってからも、根強い人気を誇る自動車MINI。そのMINIが2018年3月、ロゴを18年ぶりに変更しました。ボンネットやステアリング、ホイールの中央、リモコンキーなど各所に配されます。
「MINI」の大文字を円で囲み、両翼を付けたお馴染みのモチーフはそのままですが、ブラックとグレーの陰影が付いた立体的なロゴに代わり、「フラットデザイン」と呼ばれる平面的なデザインのロゴになりました。
旧ロゴは「ドライブの楽しみ、独特のスタイル、プレミアムな品質」を表象した世界的にも親しまれたロゴでした。BMWはそれをあえて一新したのです。
BMWは新ロゴについて伝統思考(Tradition-conscious)と未来志向(Future-oriented)の両方を表現したと述べています。伝統思考、かつ未来志向。確かにロゴのモチーフが1959年のロゴを起源としている点で伝統的ですし、近年のWindows PCやiPhoneのユーザーインターフェイスにも使われているフラットデザインは、とても近未来的な印象を与えます。
SF映画のような未来像
ヒントはBMWが2016年に100周年を迎えたのを機に掲げられたビジョン「MINI VISION NEXT 100」にあるように思えます。MINIの次の100年を見越したビジョンには、「未来志向」が詰まっています。
例えば「シェアリング・エコノミー」のコンセプト。1台のMINIをみんなで共有(シェア)する世界。ドライバーが降りた後は次のドライバーのところへ自動運転で移動し、清掃と充電を行います。そして次のドライバーに合わせて見た目も使い心地もカスタマイズされます。まるでSF映画のようですね。
このような世界が実現するのは10年後、あるいはそれ以降かもしれませんが、MINIは確実に未来のモビリティ社会に向けて動き始めています。その象徴として、新しいロゴが生まれたのかもしれません。
「乗り心地」というコンセプトを守る
では、MINIが守りたい伝統とは何でしょうか。一番はMINI独特の乗り心地「ゴーカートフィーリング」です。
ゴーカートフィーリングとは名前の通り、遊園地などで楽しめるあのゴーカートのような、キビキビとした、スピード感を感じさせる乗り心地のことです。MINIは伝統的に、この「ゴーカートフィーリング」を守り続けてきました。
そして「MINI VISION NEXT 100」においても、ゴーカートフィーリングをうたっています。むしろ、フロントを透明にするなどして、よりスピード感を感じさせる乗り心地を追求しているのです。
伝統を未来において追求すること
長い歴史を持つブランドは、必ずと言っていいほど、守るべきものと変えていくべきもの、「伝統意識」と「未来志向」の兼ね合いの問題に直面します。
しかしMINIの事例を見ると、「伝統思考」と「未来志向」は矛盾するものではないことがわかります。伝統として受け継がれたコンセプトを未来においても追求することが、ブランドを維持する秘訣なのではないでしょうか。