明治が1958年発売の瓶入り清涼飲料水「明治フルーツ」(180ミリリットル)の販売を4月1日で終了することが分かった。同社広報部は毎日新聞の取材に対し、「中期的な売り上げ減少に伴い、販売終了することになりました。長らくご愛飲いただき、ありがとうございました」とコメントした。
「明治フルーツ」はリンゴ、バナナ、レモンなど6種類の果汁と、ミルクなどを合わせた飲料。宅配や銭湯などに設置された瓶入り飲料の自販機で販売され、長く定番商品の一つとなっていた。
(毎日新聞 2019/3/4
「明治フルーツ」販売終了 60年の歴史に幕)
果汁にミルクを合わせた飲料、いわゆるフルーツ牛乳は、記事にもある通り定番商品の一つだ。それも風呂上がりに、しかも銭湯や温泉での入浴の後に飲む商品としてイメージが定着している。片手で瓶を持って、もう片方の手は腰にすえ、牛乳やフルーツ牛乳をごくごく飲む姿は、多くの漫画やドラマ、アニメなどですっかりおなじみのポーズだ。最近は、古代ローマを舞台にした漫画「テルマエ・ロマエ」でも、主人公が銭湯でフルーツ牛乳を飲む姿が描かれていた(正確には、その飲料のモデルはこの商品ではないらしいが)。
要すれば、フルーツ牛乳は非常に強固なイメージを確立している。特定の商品が、特定の利用シーン(銭湯や温泉での入浴後)で、しかも特定のポーズで飲むものであるという、極めて具体的なイメージである。かつ、快活で健康的なイメージも連想される。
ブランディングの直接的な目的は、豊かで好ましいイメージの体系を築くことだ。そうした意味で、フルーツ牛乳という商品カテゴリーはブランディングに成功したといえる。それがなぜ、販売終了となってしまったのか。要因はたとえば、個人住宅に浴室が完備されていることが一般的になったこと(いわゆる“内風呂”の増加)、それに伴う銭湯の減少、嗜好の多様化などがすぐにでも挙げられるだろう。その結果一度構築された強固なイメージが、現実世界とはなかば無関係に空想世界の中にのみ残り、状況を盛り上げるためのアイコンとして利用され続けたということか。
しかしもし、この商品が現代に合わせた新たなイメージを築こうとしていれば、販売を継続できていたかもしれない。
能藤 久幸(のとう ひさゆき)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ