島根銀行は6日、インターネット金融大手SBIグループと資本・業務提携すると発表した。第三者割当増資を実施し、25億円の出資を受け入れる。SBIグループの議決権比率は34%で筆頭株主となる。島根銀はSBIが指名する取締役2人を受け入れるほか、資金運用やコスト削減の支援も仰ぎ、収益力を強化する。
松江市内で記者会見した島根銀の鈴木良夫頭取は「きょうから新生島根銀行がスタートする」と強調。SBIホールディングスの森田俊平専務は「運命共同体として変革を実現する」と応じた。
増資の払込期日は11月29日。業務面では、島根銀が顧客にSBIの金融商品・サービスを紹介して手数料収入を得る。余剰資金の運用でSBIからノウハウの提供を受けるほか、ITを活用したサービスの利便性向上や営業コストの削減にも取り組む。
併せて島根銀は、保有有価証券の処分に伴い2020年3月期の連結純損益が23億8000万円の赤字(従来予想3億1000万円の黒字)に転落する見通しだと発表。超低金利や人口減少に伴う収益の悪化に加え、新築した本店ビルの減価償却費がかさみ、19年3月期は2期連続で減益決算だった。SBIから資金を調達し、財務基盤の充実を図る。
2019年9月6日 時事通信社
島根銀、SBIと資本・業務提携=34%の出資受け入れ
かねてより、地銀の買収が噂されていたSBIが、これまた以前から経営不安による他行との経営統合・身売りが噂されていた島根銀行への出資に踏み切った。双方ともに、遂に動いたかというところである。
日本銀行主導によるマイナス金利の影響を受けて、国債の運用を主に運用益としている銀行は、収益力が低迷し、業績が厳しい局面を迎えている。特に、地方銀行はその傾向が強い。
地方銀行の役割は、本来は地域の頼れる金融機関として、地域住民へのローンサービスや地場企業の育成・成長に向けた投資への融資協力などが期待されていたが、残念ながら、実際はそれができていない銀行が多い。なかには、企業への融資実績がほとんどなく、主に株や金融商品への運用で収益を稼いでいる、従来の銀行のビジネスモデルとは異なる銀行すら存在している状況である。
地方は、長く続いている景気低迷により企業数が減少し、働き場所が少ないために都市へ人口が流出し、益々その地方は過疎化していく状況が継続している。そして、それに合わせて融資先を失い続けていく地方銀行は、そもそもビジネスモデル自体が成り立たなくなりつつあるという、苦境に立たされている。
島根銀行は、今回SBIという、金融業界の躍進企業というブランドを掲げることで、既存イメージの脱却と顧客拡大を図り、経営刷新を果たしたいという目論見があるのだろう。そして、これは金融業界においては未だに新興企業扱いを受けてしまい、老舗のブランドをもつことができていないSBIにとっても、実に好案件である。これはいわば、相互のブランドを交換し合っているような状況である。
金融庁は、今後の地方銀行の先行きを懸念して、銀行の統合や合併、清算を検討しているところがあるため、これからも同様の案件が出てくるはずである。その場合、SBIのように、最新技術を用いつつリスクを積極的にとる企業が、ブランド価値を更に高めていくことになるのだろう。
武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師
経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
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