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Case Study

元祖はセブン‐イレブン!? いかにして恵方巻きは定着したのか

投稿日:2018年1月24日 更新日:

恵方巻

2月3日の節分に太巻き寿司「恵方巻」を頬張る習慣は、コンビニチェーンのキャンペーンにより全国に普及したと言われています。今回は、恵方巻が消費者に受けいれられた要因を考えてみます。

土用の丑の日にさかのぼる「記念日商法」

うな丼

バレンタインデーに恋人にチョコレートを贈り、クリスマスにチキンを食べ、土用の丑の日に鰻を食する…これらはどれも日本独特の風習ですが、いずれも企業側が消費者に仕掛けたものです。「記念日商法」といってもいいでしょう。

バレンタインチョコレートは1958年に東京都内のデパートで開かれたセールでチョコレート業者が行ったキャンペーンが始まりと言われています。クリスマスに七面鳥の代わりにフライドチキンを食べるようにキャンペーンを張ったのは1974年のケンタッキーフライドチキンです。(出典:ケンタッキーフライドチキンHP

土用の丑の日に鰻を食するようになったのは、江戸中期の発明家・平賀源内の発案で、夏に売れない鰻を売るために、鰻屋が店頭に「本日丑の日」の張り紙を貼ったところ繁盛したことが由来と言われています。「記念日商法」は江戸時代にさかのぼるのですね。

セブン‐イレブンが仕掛けた恵方巻

そして、近年になって急速に普及したのが、節分に食べる「恵方巻」です。節分に太巻きを食べるルーツは江戸時代と言われていますが、大正初期から昭和初期にかけては確かに存在し、大阪の一部地域で風習化されていました。
しかしそれが「恵方巻」というネーミングで全国に知られるようになったのは、1998年のセブン‐イレブンによる全国展開によるものです。セブン‐イレブンでの大ヒットに注目し、2000年代にはコンビニやスーパーマーケットの各チェーンが追従し、ブームとなりました。

セブンイレブン看板画像

大阪の風習であった恵方巻。セブン‐イレブンが全国展開したのですが、セブン‐イレブンの恵方巻の発祥は実は大阪でも東京でもなく、広島だったそうです。広島市の加盟店7~8店舗の巡回アドバイザーであった同社の野田静真氏が、加盟店オーナーとの会話の中で大阪の風習を知り、「仕掛けてみよう」と発案。恵方巻の風習をお客さんに声をかけて説明して売ったといいます。この野田氏は「おでん」や「おせち」をコンビニで売る風習を作った仕掛け人でもあり、季節商品をブームする大イベンターだったわけです。

イベントとしてのインパクト

出前・宅配コンサルタントの牧奏嗣氏は、恵方巻が短期間で全国に普及した理由として、①主婦(または主夫)の食事の手間を省ける②イベント性がある③家族の幸せを願う想いが込められている――の3つを挙げています。ここではそれ以外の理由を2つ挙げたいと思います。

1つ目は面白さとインパクトです。最近大人を中心にブームになっているハロウィーンの仮装パーティーと同様、大人が一方向に向かって大口を開けて太巻きを咥える姿は、インパクトがあり、面白さがあります。自分も体験してみたいという思いで購入する消費者も多いでしょう。

商品が企業から離れたとき、「ブーム」は「文化」になる

2つ目は、「恵方巻」がセブン‐イレブンの商品名から離れ、商品の一般名として認知されたことです。セブン‐イレブンの成功を見て、全国チェーンのコンビニやスーパー各社がこぞって「恵方巻」を売り出しました。一チェーンの商品ではなく、一般の季節商品・イベントとして認知されたことが、普及の大きな理由でしょう。

バレンタインのチョコレートは一業者のキャンペーンから離れてから、文化になりました。クリスマスのフライドチキンもケンタッキーフライドチキンのキャンペーンから手を離れてから、文化として普及しています。恵方巻が一企業のキャンペーンから離れ、一般化したときに、「ブーム」は「文化」に変わったのです。

恵方巻は記念日商法から文化にまで定着しました。最近では11月11日のグリコの「ポッキー&プリッツの日」が有名です。あなたの会社も、自社の商品やサービスをもとに、記念日を作ってイベント化し「ブーム」へ、そして「文化」として定着させる企画を構想してみてはいかがでしょうか。

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