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海外市場からの撤退によるブランド・イメージの損耗

投稿日:2019年5月9日 更新日:

ジャスダック上場で装置部品製造の「フェローテックホールディングス」は、韓国の連結子会社「Ferrotec Advance Materials Korea」(韓国・唐津市)が行うCVD-SiC事業から撤退すると発表しました。

2016年に同子会社を設立すると、主に真空装置の治具・消耗材などに用いられるCVD-SiC(化学蒸着手法による炭化ケイ素)製品の量産を目指し準備を進めていました。

しかし、同子会社および元従業員3名が、不正競争防止および営業機密保護に関する法律違反の容疑で韓国検察当局から起訴されたことで、事業継続の可能性について疑義が生じる事態となり、昨今の韓国における日本企業に対する司法判断などを考慮した結果、事業撤退が適切だと判断し今回の決定に至ったようです。

なお、この撤退に伴う損失として、CVD-SiC炉の廃棄費用で最大6億円を見込むほか、行政当局との交渉によっては追加の費用が発生する可能性があるとのことです。

不景気.com 2019/4/17
フェローテックが韓国でのCVD-SiC事業から撤退、不正競争

日韓における外交問題により、関係性の悪化が懸念されていたなか、遂にそれに関連する事業撤退が発生した。フェローテック社は、半導体製造装置向け真空シールでは約7割の世界シェアを有しており、2018年3月度決算実績では売上高905億円を上げる企業。今回の事業撤退発表は、市場動向の変化が早い半導体関連業界において、外交問題勃発後における素早い判断・撤退であると、市場で話題となった。この損切り対応について市場は概ね好感を示し、事業撤退発表後はフェローテック社の株価が上昇し始めている。

昨今では、イギリスのEU離脱問題に関連し、日産がイギリスでの生産を縮小し、ホンダはイギリス・トルコの工場を閉鎖することを発表するなど、グローバル企業の事業撤退・工場閉鎖発表が複数発表されている。

海外への進出や、事業拡大は各国・地域に歓迎されることも多いが、その逆の事業の撤退や工場閉鎖については、複数の利害が絡むので、対応は非常に困難。また、サンクコストを考慮し、カントリーリスクに対して適切な時期を見定め、事業の縮小や撤退を決断するというのは、容易な話ではない。なぜならば、今後、撤退地域への再進出を図る際のハードルは間違いなく高くなるし、撤退企業に対しての地元でのブランド・イメージは損耗することになる。そのため、長期的に撤退費用以上のダメージを受ける可能性が出てくる。

海外進出の経営戦略を立てる際には、撤退の条件を予め決めておき、投資家に対してもいつでも説明ができるようにしておくことが、今後は重要となっていくであろう。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント

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