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ソニー平井会長退任 その功績と課題は?

投稿日:2019年4月16日 更新日:

ソニーは28日、平井一夫会長が取締役を退任すると発表した。今後はシニアアドバイザーとして、経営陣に助言する。

(中略)

平井氏は4期連続の純損失を計上した直後の2012年4月に社長に就任。テレビ事業の不振などで落ち込んでいた業績の立て直しに取り組み、事業売却や分社化などの構造改革を進めた。13年11月に発売したゲーム機「プレイステーション(PS)4」はスマホゲームが勢いを増す中で好調を維持し、ソニーの収益源となっている。
社長6年目の2018年3月期の営業利益は7349億円と20年ぶりに過去最高を更新。平井氏の役員報酬は国内では異例の27億円だったことでも話題になった。18年4月に経営を吉田憲一郎社長兼CEOに引き継ぎ、会長に退いた。

(中略)

平井氏の社長就任後のソニー株は、業績不振と民主党政権時代の円高なども嫌気され、一時772円まで下げたが、アベノミクスも後押しした13年以降は徐々に回復。20年ぶりの営業最高益を達成した後の昨年9月には07年以来の高値となる6973円を付けた。

ブルームバーグ 2019/3/28
ソニーの平井会長が取締役を退任へ、「ソニーを卒業」

平井氏の功績については、賛否両論の声がある。構造改革を断行してソニーを復活させたという意見と、最先端ものづくりメーカーであったソニーらしさを喪失させたリストラ屋であるという意見である。どちらの意見についても視点は誤りではないが、論点が異なる。なぜならば、この話は経営戦略とマーケティング戦略に分けて考える話であるからである。

経営戦略としては、平井氏が経営を受けついだ時は、前任の経営陣によって痛み切っていた財務・経営状況を改善しなくてはいけない局面にあった。そのため、最優先事項として「選択と集中」による経営危機脱却を図る必要があった。苛烈なリストラも、その一環である。これについては、経営再建を成し遂げ、目的を果たしたといえる。

しかし、マーケティング戦略としては課題がまだ残っている。経営戦略を実行した結果「ソニー」というブランドの意味(≒アイデンティティ)がぼやけてしまい、それを解消することができていない。つまり現在のソニーは、顧客に抱いてもらいたいブランド・イメージが伝わってこないのだ。だからこそ、かつての「ソニー」ブランドに期待する顧客からは、現在のソニーは醒めた目で見られてしまう。
平井氏の次の経営陣が、「ソニー」ブランドの再定義に成功し、顧客支持の獲得を成し遂げた時に、ソニーが本当に復活したと市場に判断されることになるであろう。

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント

 

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