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Case Study

メルセデス・ベンツの「親しみやすい」ブランド戦略は吉とでるか

投稿日:2018年7月13日 更新日:

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツは日本において、従来の敷居の高いイメージを払しょくする親しみやすいブランド・イメージを消費者に訴求しています。その戦略について分析してみます。

高級ブランドならではの悩み

高級車の代名詞ともいえるメルセデス・ベンツ。「The Best or Nothing.」(最善か無か)とのブランド・メッセージを高らかに謳いあげ、高所得者層のステイタス・シンボルとしての地位を確立しています。

そんなメルセデス・ベンツにも、大きな悩みがあります。あまりにも高級車のイメージ、ステイタス・シンボルとしてのイメージが強すぎて、一般の消費者にとっては親しみやすいとはいえなくなってしまっているのです。具体的にいうと「値段が高いんでしょ」「俺にはまだ早すぎる」、はては「社長とか怖い人の乗り物でしょ」というイメージです。

近年のメルセデス・ベンツは積極的にブランドを拡張し、実に300万円台から3,000万円台までのラインアップがあります。300~400万円のクラスのクルマなら、一般の消費者にも十分に手が届きます。にもかかわらず、メルセデス・ベンツは彼らを寄せ付けないイメージがあったのです。

オープンなブランド戦略

そこでメルセデス・ベンツ日本では、親しみやすい、一般消費者にもオープンなブランド戦略に取り組んでいます。その事例を紹介します。

コンセプトカフェの開設

Mercedes-me

1つは、ブランド情報発信施設「メルセデス ミー」です。2011年、東京・六本木に「メルセデス・ベンツ コネクション」としてオープン。従来のディーラー店とは違い、カフェやレストランとしても利用してもらい、メルセデス・ベンツの世界観を体験してもらう店舗です。

最初は期間限定の予定でしたが、好評を受けて大阪(梅田)、東京(羽田)にも展開、さらにドイツの本社からも注目され、「メルセデス ミー」として世界展開するまでになりました。3店舗にのべ750万人が来場したというのですから、メルセデス・ベンツのオープン戦略に大いに寄与したといえるでしょう。

マス広告の見直し

2つめは、マス広告の見直しです。従来の美しく高級感のあるベンツのエクステリア(外観)を出しつつ、「397万円から」と低価格を前面に出した新聞広告などは、以前のメルセデス・ベンツでは考えられませんでした。また新聞広告の背景を読者の地域の風景に変えたりと、地域の消費者にも親しみやすい訴求も目指しました。

アニメやゲームとのタイアップ

3つめは、ゲームのキャラクターやアニメ映画とのタイアップCMです。あの任天堂のマリオを登場させ、テレビゲーム風のベンツを運転させたり、6分間にもおよぶアニメ短編映画を制作し、ベンツでカーチェイスをさせています。若者のクルマ離れが進む中、ゲームキャラクターやアニメで若者に訴求しています。

攻めのブランド戦略のリスクを考える

メルセデス・ベンツの「親しみやすい」ブランド戦略の例を3つ挙げました。ユーザーの間口を広げる大きな効果があったと思われます。
しかしこれらのブランド戦略は、メルセデス・ベンツの従来のブランドを棄損しかねないリスクを冒しているともいえると思います。

例えば、ベンツが壮絶なカーチェイスを行うアニメ短編は、ベンツの従来の「安心・安全」なイメージを損ねていないでしょうか。(映画の中で)ユーザーに乱暴な運転をさせるのはいかがなものかと目くじらを立てるユーザーもいるのではないでしょうか。

高級ブランドであるメルセデス・ベンツが「397万円から」という低価格を訴求しているのも、リスクがあります。実際に従来のオーナーから、「私のベンツはそんなに安くない」とのクレームもあったといいます。高級車ベンツをステイタス・シンボルとして保有している従来のオーナーにとっては、面白くない広告かもしれません。

ブランド拡張の難しさ

もちろん、そういった危惧も承知のうえで、このような親しみやすいブランド戦略に踏み切ったのでしょう。300万円台から3,000万円台のクルマのラインアップを擁するメルセデス・ベンツとしては、オーナーのすそ野の開拓は必要不可欠だったものと思えます。

こうしてみると、企業の経営戦略とブランド戦略は、切っても切れない関係にあることが分かります。メルセデス・ベンツ史上最多のブランド拡張に踏み切った以上、高級車としてのブランド維持と、ユーザー層のすそ野の開拓の両立という、難しい戦略を迫られているのです。

はたしてこれらの戦略がどう機能するのか今後も見守りたいところですが、さすがメルセデス・ベンツと思わせるところは、アニメやゲームのキャラクターとのタイアップにおいても、決してチープにならずに、重厚かつ洗練されたイメージが維持されていることです。アニメ短編映画では、大ヒットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を担当した貞本義行氏にキャラクターデザインを依頼するなど、広告費を惜しみなくかけているものと思われます。アニメやゲームだけれどもチープにならず、低価格だけれども高級感のあるという、難しいブランド展開に果敢にチャレンジしています。

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