PEST分析とは、経営学者であるフィリップ・コトラーが提唱した環境分析のひとつです。それぞれ4つの環境の頭文字を組み合わせたもので、市場調査の基本的なフレームワークです。今回は、巷のニュースからPEST分析について見ていきます。
PEST分析とは?
PEST分析とは、経営戦略策定や事業計画立案、市場調査におけるマクロ環境分析の基本ツールです。
政治的(P=political)、経済的(E=economic)、社会的(S=social)、技術的(T=technological)の4つの観点からマクロ環境を網羅的に見て、外部環境に潜んでいる自社にとってのプラス・マイナス要因を整理し、その影響度を評価していきます。(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)
PEST分析〜4つの環境
PEST分析は4つの環境を意味しています。それぞれ自社に影響を与えるのは、具体的には下記の要因です。
■政治的環境要因(political)
・法律、条約(規制緩和、強化)
・裁判、判例
・税制
・政権体制
・公的補助、助成■経済的環境要因(economic)
・景気、物価、株価
・為替
・金利
・消費者可処分所得
・企業設備投資動向■社会的環境要因(social)
・人口動態
・世論
・流行
・宗教、言語、文化
・インフラ
・生活習慣、ライフスタイル
・自然環境■技術的環境要因(technological)
・新技術
・特許(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)
PEST分析のポイントは、何が自社に影響を与えるかを把握するとともに、その環境の変化について注力することです。そのため、自社を取り巻く環境ひとつひとつがどれに属するかは、正確に細かく分けなくても問題はありません。
では、4つの要素が企業にどういった影響を与えているかを、具体的な事例・ニュースとともにご紹介します。
PEST分析の政治的環境要因(political)
まず、政治的影響ですが、これはもちろん、どの企業も常に影響を受ける可能性があります。法律の改正や消費税の増税などは、企業の活動やサービスに直接的な影響を与えます。
2016年4月に旅館業法が緩和されたことで追い風になっているのが、民泊可能物件のみを掲載するポータルサイトである「民泊物件.com」です。また「裁判」でいうと、フランクミューラーとそのパロディーであるフランク三浦の争いではフランク三浦の商標登録が有効となったのも記憶に新しいところです。このようなパロディーでは著作権法、商標法、不正競争防止法などの法律が関わってきます。
そして、ビールから発泡酒、第3ビールと新たな商品が生まれているのは、税制に対するビールメーカーの企業努力によるものです。
■法律、条約(規制緩和、強化)
「民泊物件.com」が正式ローンチ、旅館業法の規制緩和が追い風に
http://jp.techcrunch.com/2016/05/02/minpaku-bukken-portal-official-launch/
■裁判、判例
ブランド品のパロディーはどこまで許される?
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160517-OYT8T50009.html
■税制
「ビール税20年戦争」はいつ終結するのか?第3のビールの運命は
https://zuuonline.com/archives/89868
このように、政治的影響により、商品・サービスが販売できなくなる可能性や、新しい商品につながるケースもあるのです。
PEST分析の経済的環境要因(economic)
経済の変化は、当然、企業の活動に大きな影響を与えています。株価や為替から、個人消費の動向、原材料の価格変化など、常に変動する経済に対して企業は注力していかなければなりません。
物価の影響というと、25年間60円だったガリガリ君が今年の4月から10円値上げして70円になりました。また、為替ではユニクロのような海外生産の企業には円高が追い風になります。
■景気、物価、株価
「ガリガリ君」よ、お前もか…値上げ理由は「あの材料」の価格高騰
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20160316-OYT8T50103.html
■為替
急激な円高でデフレに逆戻り 苦境に陥ったユニクロが復活か
http://news.livedoor.com/article/detail/11525496/
PEST分析の社会的環境要因(social)
社会環境の変化の中でも特に消費者のライフスタイルの変化は、企業のマーケティング活動に強い影響を与えていると言えます。日本では、少子高齢化により高齢者向けサービスの充実につながっています。
最近では、未婚率が増加し、結婚するのが簡単ではなくなっている中、出会いの場をつくる婚活サービスが人気となっています。
また、結婚といえば、2015年には渋谷区、世田谷区が同性パートナーシップ制度を始めました。それぞれ、同性カップルに対して「結婚に相当する関係」だと証明する書類を発行しています。パートナーシップ制度は、婚姻ほどの効力はなく、税金の配偶者控除などは受けられませんが、民間企業が認めたサービスは受けることができ、ライフネット生命は、同性パートナーを生命保険の受取人に指定できるようにしました。
他にもKDDIとNTTドコモは、携帯電話の割引サービスである家族割の適用を広げ、パートナーシップの証明書を取得した同性カップルへのサービス提供を開始しました(ソフトバンクは元々、同住所のカップルには同様のサービスを提供していた)。
ここ最近では、訪日外国人の増加する中、2020年の東京オリンピックも視野に入れて、イスラム教徒向けに加工した商品「ハラル」ビジネスの展開も考えられます。このように様々な社会環境を意識することが大切です。
■生活習慣、ライフスタイル
告白方法もアドバイス 成婚率5割を超える婚活サービスが急成長しているわけ
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1605/18/news021.html
同性パートナーシップ証明書とは 今までと何が変わる? わかりやすく解説
http://www.huffingtonpost.jp/2015/11/04/lgbt-couple-shibuya-setagaya_n_8475140.html
■宗教、言語、文化
タイでも発売?森永製菓がイスラム教徒向けのハラル認証「ハイチュウ」の製造販売開始
http://www.thaich.net/news/20160422hc.htm
PEST分析の技術的環境要因(technological)
技術的な影響といえば、2015年にはスマートフォンの普及率が6割を超え、消費者の購買活動に大きな変化を生んでいます。インターネットでのショッピングが増加し、インターネット広告の多様化も生まれています。
新技術は、生み出した企業だけでなく、他の企業に影響を与えます。ガラケーからスマートフォンが主流になったように、時計もスマートウォッチが主流になる可能性もあります。また、新技術を開発できれば、それに付随して特許も取得しなければなりません。アップルは2015年の1年間で1,938もの特許を取得しています。独自性を維持するために特許は必須といえます。
■新技術
ディスプレイを手の甲に投影する新たなスマートウォッチをSamsungが開発中?
http://www.gizmodo.jp/2016/05/samsung_smartwatch_projection.html
■特許
【質問】アップルが2015年に取得した特許の数は?
http://iphone-mania.jp/news-97512/
今回は、PEST分析を実際のニュースを通じて考えてみました。ここで出したものは一例ではありますが、ブランドに与える影響について事例を通してイメージいただけたのではないでしょうか。是非、参考にしてみてださい。