ファミリーマートは8月9日、おでん、肉まんなどのファストフードについて、加盟店の作業負担軽減と食品ロス削減につながる取り組みを進めていると発表した。
同日行われた2019年おでん・中華まんの新商品発表会で明らかにしたもの。
おでんは、一番人気の大根の容器を手で簡単に開けられる仕様に変えた。具材のパッケージに鍋に配置する場所をプリントすることで、仕込み場所を迷わず仕込めるようにするなど、加盟店の作業負荷を軽減した。
おでんの製法などを見直し、全商品の販売時間を1時間延長させることで、廃棄率も減少させる。
また、2020年1月からは、従来型のおでんに加え、レンジアップタイプのおでんも全国6000店で本格展開。レンジアップタイプのおでんは、パックに複数個・1~2人前のおでんが入っており、注文が入ってからレンジ調理し、カップに入れて提供するタイプの商品となる。
昨年秋に東京都内で実験導入したところ、売上が好調だったため、全国展開を決定。従来型のおでんに比べ、廃棄ロスが少ないため、全体の食品廃棄も10%減少する見込みだ。
流通 ニュース 2019/8/9
ファミリーマート/ファストフードの店内作業改善、廃棄ロスも削減
最近、コンビニエンスストア業界は、人手不足による労働環境の問題や、本部と店舗での廃棄ロス対策での値引き対応をめぐる動きなど、さまざまな論議が行われている。
そのような状況下で、コンビニエンスストア業界での働き方改革に一石を投じる動きとなる可能性があるのが、今回の記事にあるファミリーマートの試みである。複雑化するばかりの店舗オペレーションのなかで、それを緩和し、なおかつ全店で展開するということは、現場の管理責任者にとっても僥倖となるであろう。
また、廃棄ロスは、経営管理の観点からも、厳重な対策が必要なものである。廃棄ロスの改善は、売上や粗利の改善になるだけではなく、昨今のESG対策の面でも、欠かせない視点である。
ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を用いた略称であるが、地球温暖化・公害対策や廃棄物処理、資源の有効活用が重要なポイントとなるところである。
企業活動にとっては重たい課題ではあるが、これらを経営課題として適切に対処していくことにより、企業のブランド価値を高めることが可能である。
今回のファミリーマートの取り組みは、ESG対策のブランド価値向上と、働き方改革対策、そして経営改善という、一石三鳥を狙える点で、戦略的に優れた試みであるといえよう。
武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師
経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/