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オーディオ御三家ブランドの盛衰 パイオニア上場廃止

投稿日:2019年4月8日 更新日:

パイオニアは27日、東京証券取引所第1部で取引される株式が上場廃止となった。1938年に創業して約80年。老舗の音響機器メーカーとして多くの人々に親しまれたが、2000年代に入って経営が悪化し、株式市場から姿を消した。今後は、出資を受ける香港ファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」の完全子会社となって再建を目指す。パイオニアは、多くの世界初の商品を手掛けた。1990年に発売した衛星利用測位システム(GPS)搭載のカーナビなどが有名で、当時のパイオニア株は商品開発力や将来性から人気を集め、株価は同年3月に6880円の最高値を記録した。

共同通信 2019/3/27
創業80年パイオニアが上場廃止 老舗、株式市場から姿消す

経営不振が続いていたパイオニアが、遂に上場廃止となった。これで、かつてオーディオ御三家ブランドとされた「サンスイ・トリオ(JVCケンウッド)・パイオニア」の中では、JVCケンウッドのみが、現在も上場が維持できていることになる。

JVCケンウッドも、かつてはバブル崩壊後に産業再生法を申請し、倒産寸前まで追い込まれたことがあるが、その後JVCとの統合によりブランドと事業領域を増やし、現在は安定的な経営が行えるまでに経営状況が回復した。これは、ケンウッド時代に「選択と集中」を行ってひとまず経営危機を脱した後に、経営戦略として事業領域を広げるためにJVCと経営統合したことが、生き残りの成功要因である。

これに対し、前述のサンスイは、経営不振となった後にイギリス・香港等のファンドを転々とし、縮小均衡の経営を行った結果、最終的に会社が解体され、破産に追い込まれた。「選択と集中」後の経営戦略や有効なマーケティング・ブランド戦略による打開策を見いだせなかったことで経営が行き詰まり、会社の倒産に繋がってしまった。

しかしながら、現在はドウシシャによって、「SANSUI」ブランドは復活し、「SANSUI」ブランドで各種AV機器の販売が行われている。このように、例え会社が終焉を迎えても、ブランド自体が強ければ、違うかたちで再生することは可能である。

パイオニアは、既にAV事業をオンキヨーに売却しているため、今後この領域での復活は難しいかもしれないが、しかし、カーエレクトロニクスシステムにおいては現状でも強いブランド力を保持している。かつ、「選択と集中」は既に完了している企業である。是非ともブランド力を有効活用できる経営戦略を策定し、事業領域を拡大して復活することを期待したい。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント

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