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Branding Method

ブランディングの正体 その1

投稿日:2019年2月15日 更新日:

ブランディングとは一体何なのでしょうか。いろいろな定義があり、どれもブランディングの一側面は捉えているものの、いまだにやっぱり良く分からないというのが実情のように思われます。そして実に幅広いものがブランディングの対象になっているということも、その分かりにくさを助長しているように見えます。ブランディングと一口に言っても、次のようなものがあります。

  • 商品やサービスのブランディング
  • 企業ブランディング
  • パーソナルブランディング
  • 地域ブランディング
  • コミュニティブランディング

世間でこんなにもてはやされているのに、こんなに良く分からないものは珍しいのではないでしょうか。今回BRANDINGLAB編集部は、「ブランディングとは何なのか、なぜこんなに良く分からないのか」というテーマに少しでも切り込んでみたいと思います。

実は当サイトでは過去にも、似たようなテーマでコラムを掲載したことがあります。

“ブランディングとは? 「基本的な意味と進め方」について解説!”(2018年5月16日)です。しかしこちらは、ブランディングの具体的な方法を解説したもので、今回のコラムとは視座が異なります。

1 ブランディングをかみ砕いていうと…

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会は、ブランディングを次のように定義しています(少し抽象的なので、すぐ解説を入れますね)。

“ブランディング”とは、ブランド・アイデンティティとブランド・イメージをイコールにするために【刺激】をコントロールしていく事である。

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会

ブランド・アイデンティティとは、「消費者・顧客にこう思ってもらいたい」を企業側が定義したもので、ブランド・イメージとは消費者・顧客側の頭の中にある「こう思う」というイメージです。要するに、企業側の「こう思ってもらいたい」と消費者・顧客側の「こう思う」を、イコールに近づけていくための活動すべてをブランディングというわけです。

一方で、ブランディングは「売れ続ける仕組みづくり」であるともいわれます。こちらは企業の業績に対する効果に着目した見方だといえます。この言い方は正しいのですが、マーケティングと対比する際、多少説明が必要になります。マーケティングは「売れる仕組みづくり」といわれているからです。

BRANDINGLAB編集部は、予備知識の無い方にとってももっと分かりやすく、踏み込んだ言い方はできないかと考えました。

「ブランド・アイデンティティとブランド・イメージをイコールにする」。これをもっとかみ砕いていえば、ブランディングとは「イメージを作ること」といえます。この言い方は、歴史的に見ても正しいと考えられます(この辺の事情もいずれコラムに書いていくつもりです)。

あえていうならば、この言い方はブランディングの直接的な機能に着目したものといえるかもしれません。すなわち、あるものの「イメージを作ること」によって、「売れ続ける仕組みづくり」が可能になる、という関係にあるからです。

2 ブランディングとその他の企業活動との関係

ブランド・マネージャー認定協会のテキストは、ブランディングについて次のように述べています。

“ブランドとは資産であり、経営戦略から一貫して派生するものである。
従ってブランド戦略は、企業の経営目的を達成するための全社的な取り組みと言える。(中略)コミュニケーション戦略は、売上を生み出すマーケティング戦略と一体であり、特にブランド価値を高めることに力点をおいて、マーケティング施策を計画、実行、検証していく過程のことを指す。”

(一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会ベーシックコース テキストP6
2018年12月1日改訂)

ブランディングするための戦略がブランド戦略である、とご理解ください。コミュニケーションとは、消費者・顧客と企業との間のコミュニケーションです(従業員と企業との間の、社内コミュニケーションの場合もあります)。広告、広報、PRや販売促進などを行うことです。日常語のコミュニケーションとは若干意味が違いますね。
要するにブランディングとは、かっこいいロゴをデザインしたりして「もの」の外側だけを取り繕うことではなく、その背後の戦略づくりもしっかり行うことだというわけです。経営、マーケティング、コミュニケーションを統合的に行うことによって、「もの」の「イメージづくり」を行うことともいえます。この場合の「もの」は、商品やサービスの場合もあれば、企業、事業、商品群、はたまた個人である場合もあります。

ブランディングが経営、マーケティング、コミュニケーションを包括して行われるものだというと、少し奇妙に思われるかもしれません。読者の皆さんはここで、次のような疑問を持たれたのではないでしょうか。すなわち、

「単一のブランディングというサービスは存在しないのか?」

という疑問です。答えは、ほぼ「その通り」です。

同協会の顧問である、中央大学大学院の田中教授も近著の中で次のようにはっきり書いています。

“実は、具体的な企業のアクション・レベルにおいて「純粋」なブランド戦略だけのアクションというものは、知的財産に関する活動を除いてほぼ存在しない。ブランド価値を高めるための経営戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略という活動があるだけだ。言葉を変えていえば、ブランド価値を高めることを意識した経営戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略がブランド戦略なのだ。”

「ブランド戦略論」田中洋著(有斐閣 2017年12月10日初版)P103

かみ砕いていえば、ある活動がブランディングであるかどうかを識別する基準は、当事者が「自分たちはブランディングをやっている」という意識をもっているかどうか(そしてその意識を個別の活動に的確に反映させているか)、ただそれだけです。

3 まとめ

このように考えると、ブランディングに関する「もやもや感」がかなり氷解するのではないでしょうか。もやもや感のほとんどは、「ブランディングという単一のサービスが存在する」という誤解によって生じていると思われます。
事業領域として、ブランディングを標榜する会社や専門家は多数存在します。マーケティングのコンサルタントやデザイン事務所も「うちはブランディングやってます」と言いますし、近年では人事や組織開発のコンサルタントもブランディングと言い出しています。かといって、これらは決して嘘でも誇大広告でもありません。人事や組織開発の戦略は、社内にブランドを浸透させる、いわゆるインターナルブランディングに有効です。
しかしこのような状況が、ブランディングとは何なのかを、ますます捉えにくくしていることは事実です。それもこれも「ブランディングという単一のサービスが存在する」と考えるからです。
真相は、「ブランディング=イメージづくり」のために、経営、マーケティング、デザイン、広告、販売促進、組織開発など、さまざまな活動が行われているということなのです。ブランディングは通常の企業活動の中で行われるのです。

次回もブランディングの「正体」について果敢に切り込んでいきたいと思います。

 

能藤 久幸(のとう ひさゆき)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ

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