EC決済サービス市場に関する調査を実施(2021年)
(2021年4月27日 矢野経済研究所 ホームページ)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2688
前述の通り、メルカリ社は元々がフリマアプリを祖業としており、そのサービスの利便性を高める過程でメルペイという決済サービスを開始しました。
そのため、メルカリ社はそもそもの成り立ちとして金融会社ではなく、金融サービスの拡大を 目的としたビジネスモデルではなかったのです。
そのメルカリ社が、何故BNPL市場に対して積極的になってきているのでしょうか。その検証のために、まずはメルカリ社という会社の現況における事業体制を確認していきます。
メルカリ社の主要事業は、下記の通りです。
- フリマアプリ(メルカリ)
- 電子決済(メルペイ)
- ECショップ(メルカリShops(ソウゾウ))
- 仮想通貨(メルコイン)
- スポーツ(鹿島アントラーズ)
これらのブランドについて整理に用いるフレームワークは、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)です。
(PPMについては下記記事にも内容を掲載しております。もし詳細を確認したい場合は、下記記事をご参照ください。)
PPM分析 入門 ~日本郵政グループを参考に作成~
(2019年12月25日 ブランディングラボ ホームページ)
https://www.is-assoc.co.jp/brandinglab/ppm
その結果、メルカリのPPMは下記の通りになりました。
主要事業のフリマアプリと、鹿島アントラーズは、金のなる木に該当しています。急成長は難しいものの、安定的な売上高を獲得できる事業です。
問題児は、サービス立ち上げからまだ時間が経っていない、メルカリShops(ソウゾウ)と、メルコイン(仮想通貨)事業です。こちらは、将来の事業成長に向けた布石として投資を行っている段階でしょう。
そして、今回の首題となっているメルペイは、花形事業に該当します。メルペイの該当市場である電子決済サービス市場は、市場全体が急拡大しているものの、競争もかなり激化しており、投資も非常に嵩む状況にあるというところです。
電子決済サービスは、Zホールディングス社の手掛けるPayPayや、NTTドコモ社のD払いを筆頭に、各社が経営体力の勝負で、市場内にて激しく争っている状況です。
そして、激しい市場競争の結果、M&Aも活発になってきています。
最近では、アメリカのフィンテック決済サービスを行うペイパル社が、日本のユニコーン企業であるペイディ社を3000億円という巨額買収したことで話題になりました。
米決済ペイパル、後払い新興のペイディを買収 3000億円
(2021年9月8日 日本経済新聞 ホームページ)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN081920Y1A900C2000000/
実際にメルカリ社も、経営難に陥った電子決済ベンチャーで企業を買収し、規模を拡大させています。
メルカリがオリガミ買収、スマホ決済メルペイに統合へ
(2020年1月23日 DIAMOND Chain Store ホームページ)
https://diamond-rm.net/ec-epayment/49055/
ここまでの経緯を鑑みると、メルカリ社は今後、金融事業を強化し、金融会社を目指しているのかと考えたくもなります。
しかし、メルカリ社の事業概要を俯瞰的に眺めてみると、どうやらそれだけのブランド拡張ではないという見方もできてきます。
この点について、後編で検討していきたいと思います。
■武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 エキスパート認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師
経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。
現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/