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Case Study

住みたい街ランキングの陰に「沿線ブランド」の力あり~阪急電鉄の沿線ブランディング~

投稿日:2018年11月22日 更新日:

近年、さまざまなメディアで「街の人気」が話題になっています。それをテーマにして、街の不動産屋さんを主人公にした漫画やドラマまで現れるほどです。街の人気は地域経済に多大な影響を及ぼすものですから、企業にとっても地域住民にとっても大きな関心事の一つです。そんななか、今年もマンションデベロッパー大手7社による「住んでみたい街アンケート」が発表されました。首都圏と関西の2つのランキングが掲載されていますが、関西のランキングを見てみると、少し面白いことが分かります。

1位 西宮北口
2位 夙川(しゅくがわ)
3位 梅田
4位 岡本
5位 宝塚
6位 江坂
7位 千里中央
8位 芦屋川
9位 大阪
10位 御影
(出典:住んでみたい街アンケート (首都圏/関西)2018年)

西宮北口はこの3年間1位を維持しています。夙川や宝塚などその他の街も、この何年か上位10位のほとんど常連です。

関西在住の方は、ランキングを見てすでに何かお気付きかもしれません。

西宮北口を筆頭に、上位10位のうち9つまでが阪急電鉄の沿線で占められているのです。阪急沿線でない街は9位の大阪だけです。
実は、上位のほとんどを阪急沿線の街が占めるという状況は、今年に限ったことではありません。関西では、阪急沿線のマンションは長年不動の人気を誇っています。これはいったいどうしたことなのでしょうか?

沿線にもブランドがある?

一昔前なら、「ブランドと言えば高級ファッションブランドのことだ」と考えている方も多かったことでしょう。しかし現在は、文部科学省の事業の名称にまで「ブランディング」という言葉が使われる時代です。企業、事業、地域、個人など、いろいろなものがブランドになる、という認識が広まってきています。
上述の「住んでみたい街アンケート」は、「沿線」にもブランドがあるという考え方を示唆していると言えます。「住むなら阪急沿線」という考え方は、「牛丼なら吉野家」、「温泉に行くなら草津」などの考え方と同じ構造です。

沿線ブランディングの方法

一般的にブランディングというと、ブランドのターゲットやコンセプトを設定し、ブランドを社会に浸透させるためのさまざまな施策を行うのが常道です。
沿線ブランドの場合にはどのようなステップをたどって来たのか、簡単に検証してみましょう。

話は1900年代前半に遡ります。もともと街中を走っていた阪神電鉄と違い、阪急の沿線は田園風景が多く、駅の数も少ないため距離のわりに市街へのアクセスが早く、住宅地を建設するには格好のエリアでした。

そこに目を付けた阪急電鉄は、ターゲットを毎日アクセク電車に乗って通勤する一般家庭に絞りました。電車に乗らないようなお金持ちは除外したのです。住宅ローンを創設することで一般家庭でも高価格帯の住宅購入を可能にし、「ピカピカの電車に乗って通勤する、お洒落な家に住むハイソな街の人たち」という、昭和の人たちが憧れるような住民像を打ち出していきました。沿線で大規模な宅地開発を行い、「綺麗で早うて。ガラアキで眺めの素敵によい涼しい電車」というキャッチコピーをかかげて、大々的な宣伝に打って出ました。

さらにはターミナル駅に百貨店を開業し、ホテルや劇場などの娯楽施設を整備しました。人々が電車を使って移動するための「住む」「買う」「遊ぶ」といった動機が次々と増えていきました。加えて書籍や映画などの媒体でもブームを仕掛け、長い年月をかけて、田んぼの中を走っていた電車を“憧れの高級沿線ブランド”へと変貌させたのです。

こうして見ると、「沿線」を対象としたブランディングが初めから仕組まれていた、との印象を禁じ得ません。

これからの沿線ブランディングはどうなる?

以上、阪急電鉄が行った「沿線ブランディング」を概観してきました。このように、鉄道会社が沿線の価値を向上させるため、不動産開発も行うというビジネスモデルの骨格は、現在も踏襲されています。つくばエクスプレスしかり、渋谷ヒカリエしかりです。しかし数十年の時を経て、従来のビジネスモデルは変更を迫られています。今後はどうなっていくのでしょうか。

一つ言えるのは、「ハード」型から「ハードとソフトの組み合わせ」型への転換が起こるだろう、いな、実際に起こっているということです。
かつて、沿線ブランディングの主要な事業は、不動産開発や小売・ホテル事業・観光資源開発などでした。しかしここにきて、人口減少や沿線に住む人々の高齢化などに伴い、子育てや介護といったソフト型のビジネスモデルが出現しています。実際2018年2月、阪急電鉄も西宮北口駅の施設内に認可保育所を新設することを発表しました。

ブランドが守るべきところは守りながら、時代の変化に合わせて柔軟な施策を打ち出すというブランディングの定石が、ここでも見て取れます。

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