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Case Study 話題の事例

BAUM|押し付けないサスティナブル。
「ブレない」ことを貫いた美しいブランディング戦略。

投稿日:2022年12月6日 更新日:


「本気だけど押し付けないサスティナブル」でBAUMが得た共感



資生堂 BAUM公式サイトより引用


自分で自分に合うものを吟味できるようになった消費者、参入障壁の低くなりつつある業界、国内人口の減少やコロナ禍によるインバウンドの減少や、人々の外出減少、マスクによる需要の減少と逆風の吹き荒れる化粧品業界において、大手化粧品メーカー資生堂が打ち出した新ブランドが「BAUM」です。
身だしなみとして生活の必需品という一面もありながら、自己満足、自分への投資と「豊かさ」を味わうための情緒的なアイテムであることも化粧品の重要な価値です。そこに加えて現代では自己実現の多様なあり方や自分の価値観を大切にしながらも、様々な多様性を受け入れる考え方が主流となりつつあります。SDGsへの関心もその一つと言えるでしょう。
化粧品としての質の高さは当たり前。他の同価格帯の化粧品ブランドに対してどのような差別化を図るのか。BAUMが群雄割拠の化粧品市場において確立したポジションは「本気だけど押し付けないサステナブル」でした。

より豊かに、よりサステナブルに。スキン&マインドケアブランド「BAUM」立ち上げメンバーが語るブランド創設の裏側

サステナブル思想を一方的に押しつけるものは、市場に長く根付かないのではないか、という疑念が強くありました。(中略)嗜好要素の高い「化粧品」の領域でそれをどこまで「自分ごと」にできるのだろうと。(中略)やはり化粧品は贅沢さを楽しむ側面もあり、使うときの気持ちの高揚を大切にしたかったんです。そういった意味で、デザイン性や品質面における情緒的要素はとても重要です。使用シーンの「快」の部分をいかに奪わずして、「新しい形の豊かさ」としてのサステナブル性を追求できるか、これが一番の肝であり、このブランドの成否を分けると考えていました。
(Shiseido Talks)
https://www.shiseidocreative.com/news/2878/


BAUM店舗
資生堂 BAUM公式サイトより引用

樹木と人の共生を通して、その恩恵に感謝しながら美しい循環を未来へと、自分たちの手で繋ぎつづけていきます。

資生堂 BAUM公式サイトBAUM MANIFESTOより引用


BAUMのブランディングの素晴らしい点は、テーマである「樹木との共生」を商品やパッケージ、ビジュアルとクリエイティブだけではなく、実店舗においても、またその先のブランドとしての活動においても整合性をとり、しかも他の業種や地域と共創してそれを成し得ていることにあります。
パッケージに使われている木製パーツは、木製家具メーカー・カリモク家具とコラボレーション。家具を作る際に出る端材を使用しています。端材のため、そのパーツは一つとして同じものはなく、使っていくうちに家具のようにその人の暮らしに馴染んでいきます。



資生堂 BAUM公式サイトより引用

さらに販売店舗は、「樹木の恵みと出会う場所」をコンセプトに設計されています。パッケージの木枠で用いているオーク(ナラ)の木の苗木をBAUMカウンターで育て、樹木の故郷の一つである岩手県の「BAUMオークの森」に植樹し、保全。育ったら採取し、再びBAUMに活用する循環をめざしています。岩手県と住友林業とともに取り組んでおり、全てが循環するブランドストーリーが組み上がっています。

そもそもブランドとは人の心の中に積み上がるイメージであり、そのためには一貫した見え方や戦略としての姿勢が必要です。しかし言うは易しとはこのことで、パッケージやブランドのロゴなどビジュアルの見た目は簡単に整えることはできても、企業の仕組みや戦略、それに伴う顧客の体験までを貫き通して設計し、実行するには非常に困難が伴います。

「使いたいと思って手に取ったものが、結果としてサステナブルだった!」。そう思える商品づくりを目指して、圧倒的に「かっこいい」もの、本心から欲しいと思えるものを目指し、妥協しませんでした。
(Shiseido Talks)
https://www.shiseidocreative.com/news/2878/

ただ、サスティナブルを実践している、取り組みを行っていると表面的に見せることは容易いものです。しかしながら取り組みを仕組み化していたとしても、そのストーリーを消費者から理解と共感を得て、さらにビジネスの成功へと結びつけていくことは非常に難しいと言えるでしょう。
BAUMはサスティナブルな取り組みをうたいながらも、決してそれを消費者へと押し付けはせず、商品に関わるちょっとした所で少しずつ体験してもらえる仕掛けに満ちているのです。
店舗ではショッピングバッグの無償配布を行わず、希望者に年輪をデザインしたエコバッグを販売しています。



資生堂 BAUM公式サイトより引用

決してストイックさを求めない、化粧品には欠かせない豊かさや安らぎといったイメージを損なうことなく、結果としてその存在がサスティナブルにつながっている、まさに押し付けないサステイナブルを実現させたBAUMのあり方は、プロダクトのコモディティ化が進む現代の消費者へのアプローチにおいて、「贅沢さ」と「サスティナブル」を両立させた美しいブランディング戦略といえます。

参考サイト

化粧品業界の今後はどうなる? 現状や課題、最新の動向をご紹介
【就活生必見】化粧品業界の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
SHISEIDO CREATIVE
大賞の「BAUM」クリエイターに聞く サステナブルを伝える方法

資生堂の新ブランドBAUM 「SDGs」と「顧客ニーズ」への対応両立
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ビューティー界のサステナビリティトレンド(前編)ブランドの姿勢が価値となり、購買へ
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■三重野 優理(みえの ゆり)執筆
グラフィックデザイナー・アートディレクター/学士(芸術)/MBA 経営学修士(専門職)

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