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Case Study

ZOZOTOWNは復活するか? ネット専業企業のリアル店舗によるマーケティング戦略の有用性

投稿日:2019年5月21日 更新日:

ゾゾタウンを運営する、ZOZOの苦戦が続いています。

ゾゾタウンが有料会員制の割引サービスを終了、海外PBも撤退

東証1部上場で衣料品通販サイトの「ゾゾタウン」を運営する「ZOZO」は、5月30日をもって有料会員制の割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」を終了すると発表しました。2018年12月に開始した同サービスは、月額500円もしくは年額3000円を支払い有料会員になると、商品購入価格から10%の割引を受けられるサービスです。

ところが、入会者数の増加に反して、商品を提供する一部のブランドから、ブランド価値の毀損を懸念する声が上がるなど不評だったほか、負担する割引額に対し費用対効果が悪かったとして、わずか5ヶ月でのサービス終了を決定したようです。

また、不振が続いているプライベートブランドについても、海外での展開から撤退することを決定し、それに伴う事業整理損失などとして16億1100万円の特別損失を計上する予定です。

不景気ドットコム 2019/4/26
https://www.fukeiki.com/2019/04/zozo-end-arigato.html

 

ZOZO初の減益へ。前澤社長「高い勉強代」肝いりPBで赤字125億円の見込み

ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOは1月31日、2019年3月期の連結純利益が前年比12%減の178億円になるとの見通しを発表した。従来予想(純利益280億円)から大幅に下方修正し、2007年の上場以来、初の減益決算となる見込み。

同日、都内で開かれた会見に登壇した前澤友作社長は、自身の肝いりで始めたプライベートブランド(PB)事業が、ZOZOSUITの配布見直しなどで、思うような押上効果が得られなかったことから、通期で125億円の赤字を計上する見込みであると公表。

ビジネスインサイダージャーナルジャパン 2019/1/31
滝川麻衣子氏 署名記事
https://www.businessinsider.jp/post-184323

ゾゾタウンは、社長が自ら広告塔となり、数々の炎上騒動を起こしながら話題作りを行い、これまで事業を拡大してきました。今回の主な減益要因は、PBの失敗であると各所で分析されています。

PBは、様々な業界で展開されていますが、取り扱いが難しい商品でもあります。上手くいけば、売上高が上がり、なおかつ粗利の改善に繋がりますが、失敗すると、不動在庫を多数抱え、無駄な棚卸資産を増加させてしまい、バランスシート(B/S)の重荷となります。

アパレルは元々返品が多い業界ではありますが、PBは他社で販売できない商品のため、基本的に返品ができません。そのため、不動在庫品は捨て値で販売し、それでも売れない場合は損失費用を計上して、商品を処分することになります。当然、処分費用も別途でかかりますので、B/Sだけでなく損益計算書(P/L)での負担が大きくなってしまいます。

このように、PBは経営戦略としては自社の財務面を満たすとても有効な商品です。そして、安易に手を出すと大やけどする反面、当たると非常に大きい、魅力的な商品でもあるのです。だからこそ、実施前に経営戦略とマーケティング戦略と財務戦略を、必ず連動させて考えていく必要があります。

ゾゾタウンは、ネット専業のアパレル企業のため、リアル店舗のように、マーチャンダイジングによる棚割りの工夫での販売増加を狙うことや、商品の魅力を顧客に直接伝える接客などができません。そのため、直接顧客の声を聞き、反応を踏まえて商品改良や発注量の調整を行っていくということが、難しかったのかもしれません。

また、PBの開発は、既存商品の地道な改良や顧客の声を丹念に拾い集めていく作業が、成功のためにどうしても必要となるのですが、前述の記事によると、どうもそのあたりがまだ不慣れであったことがうかがえます。最近では、ネット専業だったアマゾンもリアル店舗を出店し、顧客の求めていることを直接探索し、実験することを試みています。これらは面倒な作業ではありますが、このような顧客との直接的な接点を持つ場を、SNSメディアだけではなく、違うかたちで展開することが、今後のZOZOの成長のためには求められていくのではないでしょうか。

PBではありませんが、日本でも同様の事を試みているネット系企業があります。東証1部上場企業の、シュッピン株式会社です。

シュッピン株式会社 ホームページ
https://www.syuppin.co.jp/

シュッピン株式会社は、主にネット上でカメラ・時計・文房具・自転車の各部門で新古品を販売する企業ですが、前述のそれぞれの部門で1店舗ずつリアル店舗を開設しています。これは、顧客の声を鮮度が高いうちに反映するマーケティング戦略と同時に、リアルな販売感覚を従業員が培うために行っている、人材育成戦略のようです。そのため、店舗数はこれ以上増やす予定はなく、あくまでもリアル店舗で培った肌感覚を、主戦場のネットで反映させるという、マーケティング戦略の役割分担を非常に上手に行っています。

ネット専業アパレルとして、巧みなSNS戦術や斬新なサービスで顧客の支持を勝ち得てきたZOZOですが、今後の事業拡大のためには、新たな顧客との関係作りが必須となっていくのではないでしょうか。

急成長を遂げた企業は、必ず成長の踊り場がやってきます。そして、そこを乗り越えることで、さらなる大企業へと成長していきます。ZOZOは、今、その場面に遭遇しているのかもしれません。今回の踊り場を機会に、第二の創業を遂げ、ZOZOがマーケティング戦略のさらなる進化を遂げていくことを、これからも期待したいと思います。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。

https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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