
スマートフォンの普及により、企業と顧客とのコミュニケーションツールとしてSNSが活用されています。今回は、SNSの活用例として国内店舗数が300を超え、成長を続けているカジュアルファッションブランド「GU」をご紹介します。
企業によるSNS活用
アパレルや自動車業界などヴィジュアルの訴求が効果的な業界では、FacebookやTwitterだけでなく、写真を中心としたInstagramの活用が進んでいます。特にアパレル業界では、ターゲットである若い女性が使うSNSがFacebookやTwitterからInstagramにシフトしているようです。
具体的な活用方法としては
・商品紹介
・商品をモデルが着用した写真
・ユーザーが参加できるキャンペーン
・ユーザーがコーディネートした写真を投稿
などのさまざまな使い方がされています。
Instagramでより拡散してもらうためには、写真写りの良さを表す「フォトジェニック」という言葉がキーワードになっており、ただ写真をアップするだけでなく、ブランドを表現するセンスの良い写真が求められています。さらには、ユーザーに共感してもらい「いいね」をつけてもらう、フォローしてもらえるようなしくみが必要です。
ユーザーにブランドに関連する写真をInstagramにアップしてもらうために、ハッシュタグをつけて投稿すると参加できるプレゼントキャンペーンなどもその一つです。
ハッシュタグとは、投稿内のタグで、「#(半角のシャープ)」をつけたキーワードです。
例えば、「#GU」で検索すると、GUについての投稿をまとめて見ることができます。
GUのSNS戦略
GUは、2012年10月頃までは、郊外店舗に向けてチラシを配布していましたが、ターゲットである10代、20代の若年層のスマートフォン普及にあわせてモバイルを活用した集客へシフトしていきました。
GUのアプリは2012年3月に公開され、LINE公式アカウントが2012年08月21日にスタートしています。当初、LINEなどのソーシャルメディアでは、クーポンの配信により新規顧客の来店販促を主としていましたが、顧客数が増加するにつれ、クーポンの配布を減らして、さまざまな情報を伝えることを重視するようになりました。また同時に、ソーシャルメディアから自社メディアやアプリの拡充へとシフトしていっています。
GUが発信している自社メディアとしては、大きく次の3つがあります。
GU Timeline
ファッショニスタと呼ばれるモデルやブロガーの着こなしをまとめて見ることができます。Instagramで『#GUTL』とハッシュタグをつけたファッショニスタの投稿がオンラインカタログ化される仕組みです。
GU-SHARE
GUのスマートフォンアプリ内に追加された機能で、こちらは、自分のコーディネート写真の投稿や、他のユーザーのコーディネートに「いいね」やコメントをつけることができ、GUユーザー同士がコミュニケーションを取れるようになっています。
G.PAPER
ファッションを中心に、グルメやライフスタイルなど、さまざまな情報を発信するWebマガジンです。ここでは、ターゲットを20代の女性に絞らず、30〜40代のオシャレママに向けたものや、パパスタイルというコンテンツを作ったりと顧客層を広げるための工夫がなされています。
これら3つのサービスでは、もちろん「フォトジェニック」が非常に重要な要素となっています。
その他にも、「ハートを射抜け!バレンタインショット」「初夢スクラッチ」など季節ごとに割引クーポンが当たるキャンペーンを行うなど、継続したモバイル活用により、2016年03月には、ジーユーのモバイル会員は、LINE約1100万人、GUアプリ約700万人、メール会員約400万人、合計約2200万人にまで拡大しました。
ターゲットとSNSをマッチさせる
GUのモバイル会員増加の背景には、ターゲットを若年層にしぼったGUの方針転換がありました。GUは、2011年頃から「be a girl」という20代の女性を意識したコレクションを開始しています。さらにターゲットである20代女性にスマートフォンが普及してきた2012年3月には、GUアプリをリリース。同年秋頃には、原宿系ファッションが若い女性に支持を得ている「きゃりーぱみゅぱみゅ」を起用したCM放送を開始しました。
ターゲットを明確にした時期とターゲットによるSNSの普及のタイミングが重なったことで、会員数が順調に増えていきました。アプリの起動率も80%と高いアクティブ率を誇っています。(2013年時点)
SNS活用のポイント
企業が販促のために行うSNS活用の重要なポイントをGUから考えてみます。
・企業・ブランドにとって、親和性のあるSNSで、ターゲットがよく利用するSNSに注力する
・運用体制を備える
(GUの場合は、運営管理のスタッフが2人。別途コンテンツ制作のスタッフが2、3人。)
・PDCAを回す
(GUでは、LINEからサイトへの誘導数と、コンテンツのPV数を計測しコンテンツの改善をしています)
このようにSNS活用の成功のためには、ただSNSを開始すればいいというわけではなく、自社のサービスとターゲットにマッチしたSNSを選ぶことが重要です。
そして、写真などヴィジュアルが重要視されるSNSでは、ブランド・イメージを崩さないようにブランドとしての運用のポリシーを決めておくことも大切だと言えるでしょう。