
ブランド構築において、絶対に考えなければいけないブランド・アイデンティティ。ブランド・アイデンティティとは、自社のブランドを顧客にどう思ってほしいかを明確にしたもので、競合他社と差異化する役割を持っています。今回は、そのブランド・アイデンティティについて解説します。
ブランド・アイデンティティとは
改めて、ブランド・アイデンティティとは何でしょうか?
ブランド・アイデンティティの概念を提唱したデービッド・A・アーカー氏は、ブランド・アイデンティティについて、こう説明しています。
ブランドには、「ブランド・ビジョン」が必要である。
そのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したものだ。(出典:デービッド・アーカー著 「ブランド論」)
一方、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では、こう定義しています。
自社を、あるいは自社が提供する製品やサービスを、「顧客にどう思われたいか」を明確にすることです。
これは、別の言い方をすれば、自分たちの特徴をはっきりと打ち出した“旗を立てる”ことだと言えるでしょう。
そのためには、自分たちが大切にしていることをしっかりと自覚し、どんな旗を立てるのかを検討する必要があります。(出典:同文館出版 「社員をホンキにさせるブランド構築法」)
つまり、ブランド・アイデンティティとは自分たちのブランドの特徴を言語化して、旗のように誰からも見られるようにすることです。
ブランド・アイデンティティはなぜ重要なのか
ブランド・アイデンティティは、ブランドの特徴を打ち出した旗となるものですが、それは、ブランドを構成する最小単位であるブランド要素(ロゴや、キャッチコピー、キャラクターなど)にまで一貫して表現されていなければなりません。
なぜなら、ブランド・アイデンティティというブランド独自の価値と、消費者・顧客が心の中にいただく心象(ブランド・イメージ)を一致させる活動がブランド構築だからです。
このようにブランド・アイデンティティがなければブランド構築も行うことはできません。
それでは、実際にブランド・アイデンティティをどうやって作るかを見ていきます。
ブランド・アイデンティティを作るステップ
・ポジショニングマップ※を端的な言葉で表現する。(ブランド・アイデンティティ)
・ブランドとして何を約束するのかを明確にする。(ブランド・プロミス)
・ブランド自身の個性やキャラクターを、顧客にどう感じてほしいかを考える(ブランド・パーソナリティ)
ブランド・アイデンティティは、自社のブランドのポジショニングをもとに作っていきます。また、その際に合わせてブランド・プロミスとブランド・パーソナリティも考えます。
これだけでは、わかりづらいので、実際にこの3つを実践している例をご紹介します。
※ポジショニングマップ:市場において自社のブランドを他社のものと差別化するために
いくつかの視点にわけて位置づけたもの
長野県の高級旅館「しんゆ」のブランド・アイデンティティ
高級旅館のクオリティで、独自のコンセプト(癒し・神秘)を持つ宿
※親というのが高級旅館「しんゆ」のポジション。
このポジショニングをもとに、諏訪湖のほとりでゆっくりとした時間を過ごしてもらいたいという思いから進めていきました。
ブランド・アイデンティティ
ブランド・アイデンティティを
→「神秘なる諏訪湖に心癒される宿」 と表現。
ブランド・プロミス
ブランド・プロミスは
・変化(時間、四季)する諏訪湖の神秘的(非日常的)な美しさ
・若返れる温泉と、心の癒しを感じさせる食と空間
・心の癒しを感じさせるおもてなしとサービス(接客、メニュープラン)
に決めました。
ブランド・プロミスは「そのブランドが保証する価値を継続的に提供します」と顧客に対して約束することです。上記の約束を守れないということは、消費者・顧客を裏切ってしまうことになります。もし、これを変えたいという場合は、別のブランドを新たにつくる必要があります。
ブランド・パーソナリティ
ブランド・パーソナリティはブランドが持つ「優しい」「元気な」といった人格的な性格の特徴のことで、人にたとえて表現します。しんゆでは樋口可南子というキャラクターを設定しました。
ブランド・パーソナリティはブランド自身のキャラクターを表し、ブランドの個性を感じとってもらうために大切になるものです。
ブランド・イメージが出来上がっている場合、顧客は、ブランドを購入したり、使用したりすることで自分自身とブランドを重ね合わすことができます。例えば、男らしいブランドの衣服やアクセサリーを身にまとうことで、男らしい自分というものを意識したり演出したりすることができます。
こうしてブランド・アイデンティティと同時にブランド・プロミスとブランド・パーソナリティを明確にすることで、ブランド独自の価値を、ブランドを構成する最小単位であるブランド要素や、ブランド体験※まで浸透させることができるのです。
※ブランド体験:ブランドに接触するすべての体験。
Afternoon Teaのブランド・アイデンティティ
最後に、全国展開を行っている割と身近なブランドを見てみましょう。
全国200店舗を超える雑貨・飲食店Afternoon Teaでは、次のようなブランドメッセージをWebサイトに掲載しています。
「spice of a day」
なんでもない一日が、心地よい刺激で満たされる、ふっと愉しくなってくる。
私たちが大切にしているものは、そんな日常のなかのこころのゆとりです。(出典:Afternoon Teaオフィシャルサイト URL:http://www.afternoon-tea.net/about/)
Afternoon Teaは、「日常のなかのこころのゆとりを大切にしています」というブランド・アイデンティティを発信しています。消費者・顧客がAfternoon Teaの商品・サービスを受け取って、「日常のなかのこころのゆとり」という独自の価値を感じることができたらAfternoon Teaのブランディングは成功していると言えるでしょう。
今回は、ブランド・アイデンティティについて解説しました。ブランド構築において、ブランド・アイデンティティは一度作って終わりではなく、意図的に、一貫性を持って、継続的に発信していくことが重要です。是非、参考にしてみてください。