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Branding Method

乾電池からミキサー、自動車まで、性能をストーリー仕立てでPRするCMの数々

投稿日:2020年4月10日 更新日:


製品の品質を性能テストで実証し、ブランディングにつなげる手法が古くからあります。今回はその手法「性能テストブランディング」の事例を考えてみます。

性能テストブランディングとは

自社の製品をPRする際、価格や納期を消費者にアピールすることは比較的簡単です。通販のテレビCMでは、青汁から自動車保険まで、「驚きの価格」が盛んにアピールされますし、納期は翌日納品の事務用品配達サービス「アスクル」など、製品名やサービス名でアピールすることができます。

しかし製品の品質についてはどうでしょうか。「スプーン一杯で驚きの白さに」という名キャッチコピーがありますが、洗濯物がどのくらい白くなったかの定量評価を消費者に伝えるにはキャッチコピーだけではなかなか難しいです。そこで今回紹介するのが、製品の性能テストをストーリー仕立てで紹介し、ブランディングする手法です。この手法を「性能テストブランディング」と名付けたいと思います。

衝撃的な初代レクサスのCM

日本でおなじみなのが、天井にバーベルを接着させ、大男がバーベルにぶら下がっても落ちないなどのテストで強度を伝える瞬間接着剤「アロンアルファ」のCMや、

装着したおもちゃがトライアスロンなどに挑戦するパナソニックの乾電池「エボルタネオ」のCMです。ともに驚異的な性能をユニークなストーリーでアピールし、さまざまなバリエーションのCMが作られ、ロングセラーにつながっています。

しかし、アメリカで放映されたトヨタの高級車・初代レクサスほど、消費者に衝撃を与えた性能テストのCMはないでしょう。車のボンネットの上にシャンパングラスをピラミッド状に積み上げて走行、速度が時速232㎞に達してもグラスが微動だにしないという目を疑うような実証実験をCMで放映しました。視聴者からは問い合わせが殺到し、「仕掛けがあるのではないか」との疑いの眼をかけられたものの、テレビ番組で再度実証、成功し、さらなる反響を呼び起こしました。CMの最後に示されるタグラインは「The Relentless  Pursuit of Perfection (あくなき完璧の追求)」。中級車と思われていたトヨタの自動車が、その静粛性、低振動性で高級車市場に殴り込みをかけ、見事に参入に成功したのです。

https://www.youtube.com/watch?v=D4qnl19axAU

家庭用ミキサーでiPadを粉砕

家庭用ミキサーの強度を実証実験し、大きな成果につながったのが、アメリカの家庭用ミキサーメーカー・ブレンドテック社です。同社は「混ざるかな?(Wiii It Blend?)」チャレンジを実施、叩きつけても壊れないiPadをなんと同社のミキサーにかけ、粉砕。灰のような粉状にまで変形した姿は大きなインパクトを呼び起こしました。ほかにもゴルフボール、クレジットカード、模造ダイヤモンドなどを次々に粉砕し、YouTubeで公開。プログラム開始から7年間で合計視聴回数は3億回を超えました。広告媒体を全く使わずにこれだけの反響を呼び起こしたのです。

https://www.youtube.com/watch?v=lAl28d6tbko

強調するポイントがずれたイケアのデモンストレーション

このほか、家具メーカー・イケアのチェア「ポエング」の耐久性テストを店頭で実演したキャンペーンも有名です。しかしこのチェア、昼間のテレビ番組で有名お笑い芸人が座って激しく揺さぶったところ、壊れてしまうというハプニングが発生しました。組み立て式の家具が強みのイケアとしては、強調するポイントがずれていたのかもしれません。

意外性のあるストーリーで訴求を

以上、接着剤、乾電池、自動車、ミキサー、チェアと、様々な性能テストブランディングの事例を見ていきました。大きなポイントはデービッド・アーカーが指摘しているように、単に事実を伝えるのではなく、ストーリーの文脈に沿って伝えることです。乾電池「エボルタネオ」2個で人間のトライアスロン最速に挑む小さなおもちゃのロボット「エボルタネオくん」、「The Relentless Pursuit of Perfection」というタグラインを見事に視覚的に表現した初代レクサスには、いずれもストーリー性があります。

もうひとつは、意外性があり、奇抜な組み合わせを考えることです。小さなおもちゃのロボットと人間の一流トライアスロン選手。自動車とシャンパングラスのピラミッド。家庭用ミキサーとiPadなどは、いずれも意外性のある組み合わせです。

単に展示会に出展し、デモンストレーションを行うだけでは訴求しづらくなってきました。消費者にどんなストーリーを伝えたいのかを考え、意外性のある性能テストブランディングを行ってみてはどうでしょうか。

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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