セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

伊藤園と靴下屋 意外性のあるブランド・コラボレーションが話題に! 異業種同士のコア・コンピタンスを掛け合わせた成長戦略

投稿日:2019年7月23日 更新日:

以前、伊藤園とタビオの意外性のあるコラボレーションが話題となりました。

タビオレッグラボシリーズ「気持ちいいシルクの靴下」を共同開発

https://www.itoen.co.jp/news/detail/id=25078

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、タビオ株式会社(社長:越智勝寛 本社:大阪府大阪市)と共同で、お茶(緑茶)の渋みの主成分であるカテキンを用いて染色した消臭効果を持つ靴下「気持ちいいシルクの靴下」(全20種類)を開発し、2018年2月15日(木)よりタビオ株式会社が運営する全国の「靴下屋」「タビオ」「ショセット」「Tabio公式オンラインストア」にて発売致します(一部店舗を除く)。

タビオレッグラボシリーズ「気持ちいいシルクの靴下」は、天然繊維のシルク(絹)を使用しており、ムレを防いで足元をサラサラな状態に保ちます。今回、この「レッグラボシリーズ」の裏糸部分に当社の独自技術で開発したカテキン染色ナイロン糸を使用し、消臭機能を付加した靴下の開発に成功しました。

当社は、製品開発コンセプトである自然・健康・安全に沿って「お茶をお客様の身近な製品へ活用する」をテーマにカテキン染め繊維製品を開発しています。当社が販売する緑茶(日本茶)製品を、身近な製品に使用するという考え方とタビオ株式会社のMade in Japanで世界最高の水準を目指した製品を開発するという考え方が合致し、緑茶成分であるカテキンの消臭効果を利用した靴下の開発に至りました。

タビオ株式会社
1968年に靴下専門卸問屋として創業。社名のタビオは、Tabioをはいて地球を旅(タビ)しよう、足袋(タビ)の進化形である靴下をさらに進化させよう、という意味が込められています。その中で、世界中のより多くの方々に愛用していただける靴下を提供できるように、Made in Japanの誇りを胸に、技術、品質、サービスのあらゆる面において世界最高の水準を追求し、商品開発を行なっています。
【Tabio公式オンラインストア】http://www.tabio.com/jp/

伊藤園 × Tabio 緑茶成分であるカテキンの消臭効果を利用した靴下
伊藤園 ホームページ 2018/2/8

タビオは、1968年に靴下専門卸問屋として創業した企業です。靴下やタイツなどの専門店「靴下屋」を展開しています。2019年2月期決算時点で、連結売上高164億円、経常利益6億円という業績の、東証2部上場企業です。

伊藤園は、1966年創業の緑茶飲料最大手企業であり、傘下にタリーズコーヒーを持つ企業です。2019年4月期決算時点で、連結売上高5041億円、経常利益232億円という業績の、東証1部上場企業です。

一見、コラボレーションを行うきっかけの見えない企業同士ですが、意外なかたちで共同企画商品の販売を行うことになりました。それは、双方の経営に対する姿勢が比較的近いかたちであったことだけではなく、コア・コンピタンスに対する考え方が近かったことも関係しているものと思われます。

伊藤園のコア・コンピタンスは、やはり緑茶です。その緑茶ですが、主成分であるカテキンは健康に良いだけでなく、消臭効果があることでも知られています。伊藤園は、その点について柔軟な考えを持つことができたため、自社の得意領域である飲食以外の業界であっても、進出してみようと考えることができたのでしょう。

共同開発企業のタビオについても、Made in Japanの高品質技術を自社のコア・コンピタンスとしていることもあり、日本のお茶である、緑茶のブランドメーカーの伊藤園と手を組むことは、理想的な関係であったことかと窺えます。

このように、伊藤園とタビオは、飲料と衣料という意外性の強い組み合わせですが、両者のコア・コンピタンスが相互に補完性を持ち、なおかつお互いの持つブランドがシナジー効果を見込める関係性があったため、共同開発が可能になったのだと考えられます。

今回のコラボレーション企画ですが、2019年の現在でもまだ継続されており、市場においても一定の成功を収めているようです。値段はやや高めではあるものの、SNSやブログなどでの使用者の感想は概ね好意的であり、プレミアムラインとしての役割を果たすこともできているように受け取れます。

この事例から読み取れることは、自社におけるコア・コンピタンスは、特定領域のみで用いるべきだと考えるのではなく、他の業界でも活かすことができないかを、柔軟性をもって検討してみるということです。企業規模に関係なく、意外な企業とのコラボレーション企画を行うことで、自社のコア・コンピタンスが新たな付加価値を取得し、更なる事業領域を拡大する可能性があることを常に念頭におき、コア・コンピタンスを磨き続ける方法を模索しておくことが、今後は必要となってくるのではないでしょうか。

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

 

関連記事

chocoZAPの急拡大を実現した認知とニーズ想起のメカニズム

「来店して5秒で開始、5分で終える」がコンセプトのコンビニジム chocoZAPは、RIZAPグループ株式会社が展開する、24時間365日全店舗使いたい放題で、月額2,980円(税抜)が売りのフィット …

衝撃の変貌。英国の名門JAGUARが提案する新たな自動車メーカーの形とは。

JAGUAR公式サイトより引用元 2024年11月、JAGUARは衝撃的なリブランディングプロジェクトを発表しました。 自動車業界を取り巻く、予測不可能な潮流の中で 自動車業界は現在、大きな変革の時期 …

ブランドリニューアルの難しさを考察 アサヒスーパードライのブランドリニューアル【前編】

発売から30年を超えるロングセラー商品が、初の全面リニューアルを行うことになりました。 アサヒ、スーパードライをフルリニューアル 36年目で初 アサヒビールは1月6日、主力ブランドである「アサヒスーパ …

「イノベーションのジレンマ」を「両利きの経営」で乗り切る~コダックVS富士フイルムの事例に学ぶ

時として業界をリードする優秀な大企業が、革新的な技術を持った新興企業になすがままに敗れ去ることがあります。ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授は、このことを「イノベーションのジレンマ」と …

ゴンチャ

【商品分析】Gong cha(ゴンチャ)はアリ!本格的な台湾茶が手軽に飲める感動

(出典:http://www.gongcha.co.jp/) 2006年に台湾で誕生、今やアジアを中心に世界1500店舗以上を構える台湾茶ドリンクショップ「Gong cha」(ゴンチャ)。日本1号店が …

サイト内検索