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アフターコロナ時代の5つの消費トレンド予測

投稿日:2020年6月10日 更新日:

今回のコロナショックにより消費者の行動が変わり、新型コロナ終息後もすぐに経済が回復すると期待することは難しいでしょう。そこで、アフターコロナ時代の新しい消費トレンドを予測してみました。

 

① 「ビンボーハッピー」が再来

「ビンボーハッピー」とは角川アスキー総合研究所所長(当時)の遠藤諭氏がリーマンショック後の不況のさなかである2010年に提唱した言葉で、SNSやYouTubeなどが無料で楽しめる時代は、「貧乏でも幸福感が得られる時代である」という意味を含む造語です。2008年のリーマンショック、いや1929年の大恐慌以来の不況が襲ってくるとも予想されるアフターコロナ時代には、当時以上に「ビンボーハッピー」を求める傾向が強まってくるでしょう。

そのカギとなるのは、ZoomやFacebookなどの無料オンラインビデオ通話サービスです。すでに「Zoom飲み会」「オンライン飲み会」などがトレンドになっていますが、巣ごもり消費が終わったアフターコロナ時代でもその手軽さは受け入れられ、コミュニケーションやサービスを無料オンラインビデオ通話で行うことが一般的になるでしょう。

自宅で缶チューハイをPC画面に向けて乾杯し、スーパーで買ったもやし(すでに安さの象徴であるもやしの売れ行きが上がっています)をさっと炒めた手料理をつまみにオンラインで飲み会を楽しむ、といったことが当たり前になってきます。

すでにオンラインで飲み会を主宰する居酒屋、化粧をレクチャーするメイクアップアーティスト、ヨガを指南するヨガインストラクター、なかにはヘアカットを指南する美容師も登場しています。個人のコーディネーターやインストラクターがオンラインで活躍する時代になるでしょう。

 

② 「こだわり消費」と「割り切り消費」の両立

景気が低迷し、ファッションにお金をかけることが難しくなると、デフレ時代と同様に、「安くて丈夫なら」と割り切った消費(割り切り消費)が優勢になってくるでしょう。なかには「着るものは10着あればいい」と、これ以上の消費を行わない「無消費」も増えてきます。

デフレ時代には、ユニクロが1,900円のフリースを発売し、年間2,600万枚を売り上げ、「没個性」「国民服」と揶揄されるような時期がありました。しかしアフターコロナ時代は、「割り切り消費」と「こだわり消費」の両立がポイントとなっていきます。ユニクロ、GU、しまむら、あるいはさらに安価なブランドでもいい、その代わり自分なりのこだわりを見せたいという「こだわり消費」の欲求が高まっていきます。

すでに「プチプラファッション」(Petit Price Fashion=「安価なファッション」という意の造語)が話題になってきていますが、リーズナブルを維持しつつ、自分らしさも表現するために、コーディネートが重視されるようになります。プチプラコーディネーターがオンラインでコーディネートを指導したり、カリスマのプチプラファッションモデルがライブコマース(生中継で商品を紹介・販売)を行い、消費者がネットで購入する流れが来る可能性があります。

また今回のコロナ禍でマスクをミシンで自作することが流行したことを受け、オリジナルのソーイングや手編みなどのブームが来るかもしれません。後述のように、リユースのショップが流行ったり、レンタル服のビジネスが再び脚光を浴びたりすることも考えられます。
一方、ラグジュアリーブランドは富裕層のアイテムに回帰し、市場としては縮小するでしょう。

 

③ クレンリネス(清潔さ)がビジネスの前提に

1984年~1985年に起きたグリコ・森永事件をご記憶の方の中には、事件後、お菓子のパッケージがほとんどすべてフィルムで包装されたことに衝撃を受けた方も多いでしょう。それ以前は、例えば森永製菓の「チョコボール」は、商品棚から取って中身のチョコを取り出すことも簡単だったのです。しかし今やパッケージがフィルム包装されるのはスタンダードになっています。

日本古来の文化、握りずしから茶道までが危機に陥った今回のコロナショック。グリコ・森永事件以上に、衛生管理に変化が起きるでしょう。
すでにショップでは店員のフェイスガードの着用やソーシャルディスタンスの実施を行っていますが、コロナショックを機に、それらが新たなスタンダードになる可能性があります。また今回大きく売り上げが落ち込んだパン/ドーナツ店やうどん店などのビュッフェスタイルは廃れていくかもしれません。
緊急事態宣言(2020年4月7日)直前に、飲食店の売り上げの影響について問われた横川竟氏(すかいらーく元社長)は、次のように答えています。

「問われているのはブランド力だ。普段からクレンリネス(清潔さ)をどれだけ大切にしているか、接客がしっかりしているか。消費者は1つのことで物事を判断せず、連動して考える。安心できるブランドを作ってきたかが(売り上げの)落ち幅を左右している」
日経MJ4月3日付

重要なのは、安心して飲食できる店づくりと店員づくりをトータルに行うブランディングであると解釈できます。もちろん実際のクレンリネスは重要です。そのうえで、店員の身だしなみや態度、いすやテーブルの配置や整理整頓、内装からPOPの貼り方まで、客はトータルで店を判断しています。そういったブランディングを欠く飲食店は、淘汰される恐れがあります。
もちろん店員の、SNSでの規律に反した行動の拡散は論外です。今まで以上に命取りになるでしょう。

 

④ 「サードプレイス」が求められる時代に

生産性向上やワーク・ライフ・バランスの切り札として国を挙げて奨励されていたものの、遅々として普及が進まなかったテレワークですが、コロナ禍を機にいざ半ば強制的に導入してみたところ、「あれ、これでいけるかも」と思った企業も多いのではないでしょうか。Zoomを使ったビデオ会議はリアル会議と違わず円滑に議事が進められるどころか、役職に関わらずフラットに意見を出し合えるなど、肯定的な反応も多く見受けられます。

外出自粛期の2020年4月の自殺者は前年同期比19.8%の大幅減(厚生労働省自殺対策推進室調べ)という興味深いデータも出ています。家族と一緒に過ごせることから、また職場に行く機会が減り、思い悩む人が減ったからという分析がなされています。今までの職場がいかに人間関係の軋轢を生んでいたかという問題もありますが、労務管理の問題でもメリットがあることが判明したのではないでしょうか。また日経ウーマノミクス・プロジェクト調査によると、女性在宅勤務者の74.8%が「コロナ収束後も在宅勤務を続けたい」と答えています。ワーク・ライフ・バランスにおける効果が実証された形です。

ただし、在宅勤務にも課題があります。一つは仕事と生活との空間的・時間的線引きが難しい点です。日本の住宅事情から仕事部屋を確保するのは難しいのが現状です。
もう一つは、コミュニティからの隔絶です。特に内向的な人の中には、仕事を通じてしか人間関係を構築できない人も多いでしょう。

そこで、今後ますます必要とされるのが、職場でも自宅でもない、「サードプレイス」の確保です。スターバックスなどのコーヒーショップはもちろん、シェアオフィスやサテライトオフィス、ビジネスホテルやネットカフェ、さらにはカラオケボックスなどでのテレワークを容認する企業が増えていくでしょう。
特にホテルはイタリア軒(新潟市)といった老舗ホテルから全国チェーンのアパホテルまで、日中のみ使えるデイユースのコースが始まっています。これは今のところコロナ禍での外出自粛期間中のサービスですが、今後これが恒常的に行われて、日中はホテルで仕事をするのが珍しくなくなるかもしれません。

またビッグエコーなどの大手カラオケボックスでは、今回のコロナ禍以前から、会議や商談、テレワークなどのビジネスシーンでの活用が展開されていました。固定費比率の高いカラオケボックスにおいて、稼働率の低い昼間のビジネス利用はもってこいだったのです。レジャーとビジネスという相反する用途ですが、デジタルサイネージなどで雰囲気を変えることで十分両立は可能だと考えられます。
オンライン・オフラインを問わず、趣味や勉強など会社以外のコミュニティビジネスも盛んになると思われます。

 

⑤ リデュース・リユース・リサイクルの3Rが再び脚光

景気の低迷によって、またエコロジー意識の高まりによって、リデュース・リユース・リサイクルの3Rが再び脚光を浴びるでしょう。
2020年7月からレジ袋の有償化が始まりますが、すでに前倒しをしている商店も多いです。マイバックを持つのは当たり前となり、瞬時に折り畳みのできるエコバック「Shupatto」(株式会社マーナ)のようなヒット商品・アイデア商品が次々と現れるでしょう。

またセブンイレブンが2020年春から「エシカルプロジェクト」と名付け、消費期限の迫った商品にポイントを付与することで食品ロスが削減される仕組みを実施しています。
注目すべきはローソンのFC加盟店の動きで、消費期限の迫った商品を値下げするという「見切り」を行っています。10%増収、廃棄は1割減を達成した店もあります。全国のコンビニで「見切り」が常態化する可能性があります。

加えて、ブックオフやメルカリなどのリユース市場が活況になるでしょう。レンタル洋服のairClosetは、10万着以上の中からプロがコーディネートした洋服をサブスクリプションで購入できるサービスで、前述の割り切り消費とこだわり消費の両立の側面からも、消費者に歓迎されると思われます。カーシェアリングなどのシェアリングビジネスも再び加速するかもしれません。レンタルやシェアなどの新しいビジネスが登場する可能性が高いです。

 

アフターコロナ時代を生き抜く

アフターコロナ時代の5つのトレンドを予測してみました。中流層の減少どころか、貧困層が増加し、いかに生き抜くかというぎりぎりの経済状況が見込まれます。貧困でも利用できる「フリー」「シェア」「オンラインコミュニケーション」「リユース」「レンタル」といったサービスが、今後伸びていくと思われます。

 

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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