X

「五輪」商標登録 オリンピックのブランド保護

国際オリンピック委員会(IOC)が、オリンピックを意味する日本語の「五輪」について特許庁に商標登録を出願し、認められたことが21日までに分かった。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、公式スポンサー以外の便乗商法を防ぐのが狙い。

IOCは東京大会の組織委員会を通じて「日本で『五輪』はIOCが開催するオリンピックを意味するものとして周知、著名だ。既に不正競争防止法の保護対象となっているが商標登録で権利の所在をより明確にし、ブランド保護を確実にしたい」とコメントした。17年12月に出願し、今年2月1日付で登録された。

(日本経済新聞 2019/2/21
「五輪」を商標登録 IOC、東京大会の便乗商法防止)

ブランドを保護するために商標制度を活用することは広く行われている。しかし正直なところこれはいかがなものだろうと思ってしまった。不正な便乗商法を防ぐ狙いがあるというが、うまく運用しなければ、オリンピックによる景気浮揚の効果も薄れてしまうのではないか。

メディア上では盛り上がっているが、実際どれくらいのインパクトがあるのだろうか。実のところ、それほど大きな変化はないかもしれない。というのは、「オリンピック」関連の語が商標登録されたのはなんら新しいことでないからだ。古いものだと1918年にIOCが「オリンピック」を商標として出願登録している。「区分」は「28類」で、「玩具、遊戯用具、運動用具他」である(商標は、商品・サービスの種類ごとにいちいち登録する必要があり、そのカテゴリーを類という)。その後他の区分でも登録しており、権利の範囲を徐々に拡充しているようだ。また、「パラリンピック」は公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が41類(教育、訓練、娯楽、スポーツ、文化活動他)で2007年に出願し、翌2008年に登録している。これらの情報は特許庁のWebサイトで誰でも見ることができる。

また、組織委などが「不正便乗商法」(の恐れがある例)として示したものにも、疑義を呈する専門家もいるようだ。

オリンピックはもともとは古代ギリシャの平和の祭典で、近代オリンピックもアマチュアリズムを是として始まった。事業として継続するには利益を出す必要はあるが、商業主義が極端に過熱していく姿は、正直あまり見たくはないものだ。

 

能藤 久幸(のとう ひさゆき)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ

Categories: 話題の事例
sc: