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獺祭デザインアワード 新たなイノベーションのために

変わらないために変わり続ける
桜井会長がアワードに込めた思い
旭酒造は「獺祭」の次なるイノベーションを目指し、志を持った若手クリエイターとコラボレーションを果たすことを目的に2018年、「DASSAIDESIGN AWARD」を実施。「純米大吟醸二割三分 獺祭」の化粧箱デザインを募集し、最高賞・獺祭賞に選ばれた作品には賞金100万円が贈られ、さらに5万本が同デザインで制作され、国内外で実際に販売される予定となっている。8月17日に応募を締め切ったが、初開催にも関わらず、400を超える作品が集まった。
(中略)
桜井会長は「審査を通じ、デザインの可能性を改めて感じる機会となり、とてもワクワクした。ブランドとは変わらないために、変わり続けなければならない。化粧箱もネーミングも、すべてのデザインに自分の強い思いを込めてつくっているが、そこで固定化されると、お客さまからいつもと変わらない『獺祭』だと思われてしまいかねない。人にはいろいろな“ゆらぎ”があるし、またそこに魅力を感じるもの。そういった新しい“ゆらぎ”を『獺祭』に取り入れたいと考えたことがアワードを企画した理由。
今回、いろいろな視点から『獺祭』を捉えた、多様なメッセージ性を持った作品が多く集まり、大きな刺激をもらった」と話した。

(アドバータイムズ 2019/2/4
「獺祭」が若手クリエイターとコラボ「DASSAI DESIGN AWARD 2018」最高賞が決定)

旭酒造といえば、業界の慣例に囚われずいつも何か新しいことをやる会社、というイメージがほぼ確立しているのではないだろうか。従来経験と勘に頼っていた工程を機械化し、徹底的に数値管理することで、同社は杜氏を置かない酒造りに成功している。また、純米大吟醸しか作らないことでも有名だ。その旭酒造がまた新たな企画を打ち出している。

「二割三分」とは精米歩合を指す。要すれば玄米を磨きに磨いて、重さが23%になった白米を使っているということだ。この精米歩合の高さからも想像がつくが、「二割三分」は獺祭の中でも最高級品だ。デザインを公募し、審査員に著名人を迎えるのは、PRとしても効果的だ。

旭酒造の桜井会長のコメントもなかなか面白い。ブランドは「変わらないために代わり続けるものだ」とか、「変わってはいけないところと、変わらなければいけないところがある」ということはしばしば言われる。しかしそこに「ゆらぎ」という表現を持ち込んだのはあまり聞いたことが無い。ブランドイメージの形成に「ゆらぎ」を採り入れること、そしてデザインの公募をその実現手段として位置付けている点は、桜井氏独特の思想ではないだろうか。ここまで言ってしまうとほとんど言葉遊びかもしれないが、いずれにせよこれからも、獺祭と旭酒造の動きには注目していきたい。

 

能藤 久幸(のとう ひさゆき)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ

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