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温泉街に巨大ペヤング 狙いはSNS、苦い過去も教訓?

パクチー味や通常の4倍盛りといった奇抜な新商品が次々登場する即席麺「ペヤング」シリーズ。インターネットでの話題の広がりを意識した製造・販売元「まるか食品」(群馬県伊勢崎市)の戦略がウケている。2014年の異物混入問題で売り上げは落ち込んだものの、その後は順調に回復。温泉街とコラボした企画も始め、さらなるSNSでの拡散を狙う。

群馬・伊香保温泉のシンボルの石段街に「ペヤングソースやきそば」の容器を模した高さ1・9メートル、幅1・4メートルのモニュメントが現れたのは昨年11月下旬だった。主に木製で、容積は実物の約1千倍。「巨大ペヤング」の下を流れる温泉の湯と湯けむりが即席麺の「湯切り」のようだと話題に。SNSには画像が続々と投稿された。

(朝日新聞デジタル 2019/1/22)

温泉街の駅前に巨大な「ペヤング」のモニュメント。ものすごいインパクトである。

ただ一方で、温泉街としての情緒はどうか。久方ぶりの温泉に胸を躍らせて伊香保温泉駅降り立った直後に、この“異物”との対峙を余儀なくされる人はどう思うだろう。なかには「品がない」「温泉街の風情が台無し…」と落胆する人もいるのではないか。

伊香保温泉は戦国時代に真田氏が整備したとされ、後に竹久夢二や夏目漱石らも愛した歴史ある湯治場だ。それが一時の熱狂(それも成功するとも限らない)を求めるあまりに、数百年かけて培ってきた歴史や文化、またそれらによって醸成された既存の資源との整合性が取れなくなっているようにも見える。

世の中猫も杓子も“SNS映え”の時代だが、それは何らかの価値とのトレードオフである。ブランディングに必要なのは一貫性と継続性である。新たな価値をブランドに取り込む場合には、既存の価値との整合性があるか、あるいは整合しなくてもそれを補って余りあるメリットがあり、ブランドの新しい性格を作れるかどうか、じっくり検討する必要がある。はたしてこの取り組みが吉と出るか凶と出るか、先行きが気になるところだ。

 

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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