セミナー・実践会・相談会でブランド課題を解決する

Case Study

モスバーガーのブランド戦略〜キーワードは「おいしさ」〜

投稿日:2018年2月16日 更新日:

モスバーガーのとびきりハンバーグサンド

絶好調のマクドナルドや、出店相次ぐ高級ハンバーガー店が話題になる中でも、業界2位のモスバーガーは独自なポジショニングとブランド戦略で健闘しています。詳しく見てみましょう。

実は堅調な業績

2017年度のマクドナルドのV字回復が経済紙やテレビで盛んに取り上げられる一方で、今度はハンバーガー業界2位のモスバーガーが経済紙などで叩かれています。「創業以来2度目の絶不調」「モス苦戦、消えた持ち味」等々です。

しかしこれらの記事を見る限り、絶好調なマクドナルドと対比させようとする印象操作の感がぬぐえません。モスバーガーは、2017年4~9月期決算において、既存店売上高が前年同期比0.8%増と、中期経営計画の「継続的な1%増」をほぼ達成しています。以降も10月は0.7%減ですが、11月(1.4%増)、12月(1.5%増)、1月(1.0%増)と、ほぼ中期経営計画どおりです。

確かにハンバーガー業界では、鮮やかなV字回復を遂げた首位のマクドナルド、「発酵熟成肉黒毛和牛バーガー」といった話題商品をヒットさせたファーストキッチンなどの3番手以降の既存店、出店相次ぐアメリカ発高級バーガー店などで、話題性においては埋没している感がありますが、依然としてモスバーガーは根強い人気があるのです。調査サイト「しらべぇ」による「好きなファストフード店ランキング」でもモスバーガーはマクドナルドを抑えて1位になっています。

モスバーガーの独自性

ではモスバーガーのブランド戦略を見ていきましょう。モスバーガーは次の点で、マクドナルドなど競合にはない独自性があります。

「おいしさを追求している」というイメージ

「おいしさ」という定性評価を判断するのは難しいのですが、実際の味がどうであるかはとりあえず別にして、「モスバーガーは(価格やサービスよりも)おいしさを追求している」というブランドイメージがあります。
モスフードサービスの中村栄輔社長もその点は強調していて、次のように話しています。

「差別化」「地域密着」を基本戦略とし、その上に「おいしさ」「安全・安心」「多様化」「利便性」「店舗体験価値」「輝く人」という6つの柱を据えています。この中で最も大切にしているのが「おいしさ」であり、モスグループが絶対に譲れない価値です。

マクドナルドがまさにファストフード、早く商品を提供するのに比べて、モスバーガーは、注文後、客に番号札を持たせて、数分~10数分かけて作り、店員がテーブルまで運びます。ファストフードで待たされることは客によって賛否がありますが、作り置きではなく手作り感を出しているのは間違いないでしょう。

モスバーガーのこだわり

モスバーガーのWebサイトではこだわりのポイントを紹介している。

(出典:http://mos.jp/omoi/

45周年スローガンも「日本のハンバーガーを、もっとおいしく。」と掲げ、バンズ(パン)を10年ぶりにリニューアルし、全粒粉や国産小麦の配合をアピールしています。レタスなどの食材をつくる日本の現地農家とのネットワークを強調しているのも、もちろん食の安全という点もありますが、手作り感、真心感を前面に出し、おいしさを追求しているというブランディングの一環と思われます。

地域性

モスバーガーは、マクドナルドと比べてもフランチャイズ店の割合が高く、本部と地域のフランチャイジーとの関係も深いといわれています。その強みを活かして、地域密着の店舗展開と、地域色豊かな商品を打ち出しています。2017年度も「全国のスタッフが考えたご当地創作バーガー決戦」というキャンペーンを張り、北海道の「北見しょうゆタレとんかつバーガー北海道産ポーク使用」から九州の「長崎トルコライス風バーガー」までを商品化しています。

日本人向け味付け

テリヤキチキンバーガー、ホットドッグ、モスライスバーガー、ロースカツバーガーなどの和風メニューを定番化したのも、モスバーガーの特徴です。パティも日本人の好みに合わせて牛豚の合挽肉にしているといわれます。
モスバーガーのメニュー

「中価格」というポジショニング

モスバーガーのブランドの特徴を述べてきました。現在のハンバーガー業界では、低価格のマクドナルドと、1000円以上のプレミアムバーガーを提供するアメリカ発高級バーガー店が目立ち、一部の経済紙からはモスバーガーは「中途半端」という指摘もあります。
しかし逆の見方からすると、低価格のマクドナルド、高価格の高級バーガー店の間の、中価格帯のポジショニングを取っているともいえます。

シェイクシャックなどアメリカ発の高級バーガー店が脅威といわれていますが、価格帯の点で、必ずしもバッティングしないかもしれません。そして何より、日本人向けに徹底され、地域色も豊かな商品開発は、既存のハンバーガーチェーンも新規の高級バーガー店も、なかなか真似できないと思われます。長期的な視野でいえば、モスバーガーは理にかなったポジショニングとブランド戦略をとっているのではないでしょうか。

ブランディングラボおすすめ記事

マクドナルドとモスバーガー
・マクドナルドとモスバーガーの比較から見るブランドにおけるポジショニングとは?

関連記事

森

村上春樹のマーケティング理論 ベストセラーを生む6つのセオリー

30歳で作家デビュー、『ノルウェイの森』の上下巻約1000万部の大ヒットを皮切りに、69歳の現在までベストセラーを生み出しつづけている村上春樹。今回はマーケティングの見地から、村上春樹自身の読者獲得戦 …

jr

レビットの鉄道衰退論とJR東日本の事業領域拡大戦略

(出典:http://www.jreast.co.jp/suica/whats/) JR東日本は鉄道会社でありながら、流通・サービス、不動産・ホテル、電子マネーまで事業領域を拡大しました。なぜこのよう …

ユニクロ“エアリズムマスク”の社会貢献 ~CSRとCSVとバリューチェーンの関係性を知る~

2020年に入り、COVID-19ウイルス(通称:新型コロナウイルス)が世界的な流行となり、パンデミックが発生しました。世界各地で深刻な医療用品不足に陥り、特にマスクの供給が圧倒的に不足していたことが …

がんじがらめの状況下でブランドを創り出す。アイフルから読み解くパーパスブランディングの力。

消費者金融大手のアイフルグループが2022年7月、VIを刷新しました。 アイフルグループ、VI(ビジュアルアイデンティティ) を刷新 ~これからの事業展開に情緒的価値を持たせることをデザインで体現。次 …

スターバックスのドリンク

スターバックスの4P/4C戦略【製品戦略・価格戦略編】

1月17日のコラム「スターバックスの4P/4C戦略【立地戦略・プロモーション戦略編】」では、マーケティングミックスの4P(製品・価格・立地・プロモーションを組み合わせたマーケティング戦略)のうち、立地 …

サイト内検索