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悲願の東京直通を果たした相鉄線が目論む沿線ブランディング

相鉄線海老名駅とJR新宿駅を結ぶ相鉄・JR直通線が三十日に開業するのを前に、相模鉄道(横浜市西区)は七日、報道陣と、インターネットで情報発信をしている沿線住民向けに初めての試乗会を行った。

関係者を乗せた直通線用の新車両「12000系」は、相鉄線西谷駅(横浜市保土ケ谷区)から出発。すぐ相鉄線を離れて新設の地下トンネルに入り、建設が進む地下駅の羽沢横浜国大駅へ。トンネルを出て地上に戻ると、JR線に合流。再びトンネルを通過して京急電鉄やJR線が並走する鶴見駅周辺に出た。しばらく走って次の停車駅となる武蔵小杉駅に差し掛かり、約一時間かけて新宿駅に到着した。

試乗会に長男(5つ)と参加した横浜市旭区の藤井暁子さん(39)は「外から完成していく様子を見ていたが、ようやくトンネルを通過できた。新宿は遠いイメージだったが、行き来がしやすくなる」と話した。

東京新聞 2019/11/29
新宿へ「行き来しやすくなる」 相鉄・JR直通線 30日開業

相鉄線(相鉄本線)は、横浜と海老名という神奈川県内の要衝をつなぐ私鉄路線で、その性質上、これはまで「神奈川県民のためのローカル路線」というイメージが先行していた。実際、同社が行った調査では都内における相鉄線の認知度は40%と、東京・神奈川をつなぐ東急東横線や京浜急行と比べると後れを取っていたようだ。

今回、相鉄線はJR線への相互乗り入れにより創業以来の悲願だった東京への直通運電を実現したわけだが、実は「海老名→新宿」というルートはすでに小田急線という「大動脈」が存在しており、ユーザー目線で見てみるとあえて相鉄線を選ぶメリットはあまり見えない。

それでも「新宿へ直通」というトピックは大きなインパクトがあり、住人の転出を防ぐ一方、沿線外の人にとっては転居先の候補の一つとして相鉄線沿線を喚起させる――つまり沿線ブランディング的な意味合いは大きい。

 

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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