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ブラックフライデーとブランドの価値狂騒

【冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」を展開するイオンサヴールは11月28日~12月1日、Picard 初の試みとなる「Picard ブラックフライデー2019」を開催する。

ワインにぴったりのフィンガーフードや、本格肉料理など対象となる全14商品を通常よりも求めやすい特別価格で提供する。

店頭では「ブラック」の「黒(96)」にかけて、「496」円のイタリア産本格ピッツァや「960」円の濃厚チョコレートスイーツを販売する。

通販サイトでは、対象商品が最大53%オフで登場する。クリスマス、忘年会、年越しなど、パーティーシーズンの幕開けにふさわしい、手軽で「豪華に見える」パーティーメニューを提案する。

2019年11月27日 流通ニュース
ピカール/初の「ブラックフライデー」11月28日~12月1日

海外発祥のセールスイベントであるブラックフライデーが、日本でも定着しつつある。近年では、各社でこの日に合わせたバーゲンセールや特別限定商品を用意するなど、年末商戦前に向けた、一大イベント化の様相を呈している。

そのような中、イベント発祥の地でもあるアメリカにて、ブラックフライデーに反対する企業も増加してきている。主に反対している企業は、パタゴニアなどの環境保護に熱心な企業だ。反対する理由としては、イベントによる過剰な消費宣伝活動を行うことにより、大量の商品生産やそれに伴う売れ残り商品の処分が発生することにより、無駄なエネルギー消費や地球資源が浪費され、環境への負荷が高まる事態が懸念されるためである。

環境保護活動については賛否両論あるが、もはや世界的な動きとなっているのは確かである。ESG経営やSDGs経営が賞賛されるなかにおいて、目立った浪費活動が見られる企業は社会的な非難を浴び、コーポレートブランドの価値自体を減耗させかねない。

こういった点も踏まえ、一部企業では売れ行きが落ちたことで返品・廃棄予定となった日用品や化粧品などの商品について、このブラックフライデーを利用して格安で販売することを検討するなど、調達商品の有効活用と消費者への還元を兼ねた取り組みも見られてきている。このような消費者満足と生産者・販売者満足が達成されるイベントであれば、ブランド価値を損なうことなく、ステークホルダーの理解も得られやすいのではないかと推察される。

 

武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師

経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/

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