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無印良品のファミマ撤退に見る、ブランドイメージの変化とその影響

ファミリーマートの売り場から、無印良品の商品がなくなってしまうことになりました。無印良品を展開する良品計画によれば、2019年1月28日付でファミマへの無印良品の商品供給を終えたということです。現在ファミマで販売中の無印良品の商品は、在庫がなくなり次第、その販売が終了するといいます。

(中略)(無印良品の:引用者註)ブランドコンセプトも、もともとは「わけあって安い」というPB商品的な特徴を前面に出していましたが、やがてそのシンプルな製品の特徴を前面に出すようになりました。そして無印良品の商品は、「これがいい」という製品を選ぶのではなく「これでいい」と考えるシンプルな生活を好む消費者に支持されるという、これまでなかったタイプの生活商品ブランドへと発展していくことになります。

(中略)ファミリーマートも無印良品も、セゾングループの激動の時代を乗り超えながら、別々の方向へと発展し、今の成功があるわけです。その立ち位置がいつの間にか違うものになってきたというのが、今回の「無印撤退」の真因ではないでしょうか。

(DIAMOND online 2019/2/1)

無印良品のオンラインストア「muji.net」でも、ファミマからの撤退が1月28日に発表され、熱心な無印ファンを騒がせた。引用元の記事はすでにその理由を詳しく分析しているが、これを消費者の頭の中の「ブランドイメージ」の変化という観点で考えてみると、ある意味典型的な事例と言えそうだ。

引用にもある通り、無印良品は当初「わけあって安い」というPB商品的な特徴を前面に出していた。それゆえ消費者の頭の中には、「無印良品はわけあって安い商品だ」というブランドイメージが浸透して行ったと考えられる。これはファミマもしくはコンビニという業態にもマッチする。

しかしある時期から、無印良品のブランドイメージは大きく変わり始めた。ナチュラル、シンプルを軸にした、独特の哲学に基づく独自のブランドへと発展を遂げたのである。もちろんその陰には、無印良品側の意図的なプロモーションがあった。消費者が抱くブランドイメージも、その新たなコンセプトに徐々に近づいて行った。また、無印良品が「わけあって安」かった時代を知らない台湾などの海外市場では、最初から高級品の立ち位置を獲得してさえいる。

無印良品のブランドイメージが変化したこと(あるいは企業側が意図的に変化させたこと)が、ファミマ店頭での販売にどのような影響を及ぼすか、経営陣やマーケターが初めから織り込み済みだったかどうかは知る由もない。しかしその「独特の哲学」はコンビニとは到底相いれない。このようにブランドイメージの変化は、現場での具体的な販売戦略にも大きな影響をもたらす。

 

能藤 久幸(のとう ひさゆき)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ ブランド・コンサルタント

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