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家系ラーメンに見る、ブランド管理の難しさ

横浜家系ラーメン。1974年創業の「吉村家」(当時は新杉田駅近く)を源流とし、その弟子や孫弟子を中心に神奈川県を中心に広がっていった豚骨醤油ラーメンだ。
屋号に「○○家」という店名が多かったことからファンの間で「家系(いえけい)」と呼ばれる。クセになる味とともに、麺の硬さ、油の量、味の濃さをお客の好みで調整できるのも人気だ。
近年、首都圏を中心に家系ラーメン店の増加が著しい。繁華街を歩いていて「○○家」と付いたラーメン店をよく見かける人は少なくないはずだ。
(中略)
かつては「家系」であることがブランドだった時期もある。今や資本系の屋号が目立つうえ、家系で修業しながらも独立の際には「家系」「〇〇家」を店名に冠した店を出さない若い店主が出てきた。「家系」のブランドがあまりに一般化し、希少性が落ちてしまっていることを示唆するようだ。

(東洋経済ONLINE 2019/03/11
「家系ラーメン」出身者が家系を名乗らない理由
ブームならぬ増殖でブランドが一般化した)

ここ5年ほどで、吉村家とは無関係な数社の大手、いわゆる「資本系」のラーメン店が「家系」を名乗ることが増えてきたという。

希少価値を保つため店舗数や販売量などの「数」を抑えれば、売上は増やせない。一方「数」を増やせば希少価値は下がる。両者はトレードオフの関係にある。好例はシャネルやルイ・ヴィトンで、その商品が女子高生にまで普及したことで圧倒的に高い憧れの対象としての地位はすでに失っている。ゴディバは近年コンビニにまで販路を拡大したことで、立ち位置が怪しくなってきた。

シャネルやゴディバと家系ラーメンの特徴的な違いは、(もちろん価格帯も挙げられるが)ブランドを管理する主体にある。正確にいえば、家系には管理する主体が存在しない。○○家はもともと吉村家の弟子や孫弟子が名乗っていたものだが、それぞれの店舗自体は互いに独立した組織である。要すれば、家系ブランドを統合管理する組織は(おそらくは)存在しないのだ。

シャネル等は「数」を増やしながらも、ハイブランドとしてのイメージを維持できるよう企業側が管理してきたと考えられる。一度ブランドを立ち上げても注意深く管理しなければ、ブランドの輪郭はすぐにぼやけてしまう。

 

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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