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まさかの“会話調”も登場。ネーミングはどこへ向かう?

「本日はお忙しい中、『まじヤバくない?』の内覧会にお越しいただき、ありがとうございます」

女性司会者のアナウンスで、高級食パン専門店「まじヤバくない?」の内覧会が幕を開けた。粉ものグルメが数多い群馬県の中でも、高崎はおいしいパン屋が軒を連ねる激戦区。近くには生食パンの有名店「乃が美 はなれ 高崎店」もある。2019年4月18日に開催された内覧会は注目を集め、地元紙の記者やグルメブロガーなど多くのメディアが集まったが、真顔で語られたその変な店名に吹き出す人は、1人もいなかった。

このパン屋をプロデュースしたのは、ジャパン ベーカリー マーケティング代表の岸本氏。外資系ホテルでベーカリーショップのマーケティングなどを担当した後、20代後半で退職して横浜の大倉山にベーカリーカフェ「TOTSZEN BAKER’S KITCHEN(トツゼンベーカーズキッチン)」を開業する。

日経クロストレンド 2019/7/2
変な名前の高級食パン店が増殖中 仕掛け人の狙いとは」

「ネーミングとは(ブランドの)ストーリー表現すること」とは、「Bunkamura」や「新生銀行」などの命名を手がけた岩永嘉弘氏の言だが、最近はストーリーから、さらに細分化され「センテンス」にまで分解されたようだ。

「まじヤバくない?」とはパン屋の店名らしさが全くない(というより、もはや屋号の常識から完全に逸脱している)ネーミングだが、この珍妙さこそが狙いか。単にインパクトばかりが強調される向きもあるが、このネーミングの妙は“会話調”にあるとみる。つまり、(初見の)消費者がそれが「店名」だと真面目にとらえないからこそ成立する、ネーミングとしてのフレッシュさがあるのではないか。

SNSなどの影響下のもと、日本語のコミュニケーションが変わりゆくなかで、ネーミングもまた変質しつつある。ただ、これが進化なのかどうかは分からないが……。

 

BRANDINGLAB編集部 執筆
株式会社イズアソシエイツ

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