
スマートフォンの中には、名前を知られないまま世界を支える部品が数多く入っています。積層セラミックコンデンサなどを手がける村田製作所は、その代表格です。
同社が興味深いのは、典型的なBtoB企業でありながら、一般層に届く接点をつくってきた点にあります。
≪注意書き≫本記事は各ライターによる情報収集によって作成されているため、主観や意見、事実と異なる文言が含まれている可能性があることをご了承ください。
「見えない部品」という宿命
電子部品は完成品の内部に収まります。どれだけ高性能でも、使う人の目には触れません。
これはブランド認知にとって構造的な不利です。BtoB企業の知名度が上がらない最大の理由がここにあります。取引先には知られていても、学生や一般層の頭の中には社名が存在しません。
ロボットという「翻訳装置」
同社が知られるきっかけの一つが、自転車型のロボットに代表される技術デモンストレーションです。
これはブランディングの観点で見ると、非常によくできた設計です。センサーや制御技術という抽象的な強みを、誰が見ても分かる形に翻訳している。
技術説明を100行書くより、倒れずに走るという一つの事実のほうが伝わります。BtoB企業が抱える「すごさが伝わらない」問題への、明快な回答だといえます。
採用への効き方
就職活動で企業を選ぶとき、学生は事業内容の前に「聞いたことがあるか」で候補を絞ります。
技術デモやキャラクターは、この最初のふるいを通過するための投資だと解釈できます。
キャラクターが果たす役割

ブランド要素の観点では、キャラクターは親しみやすさと記憶のしやすさを一度に獲得できる手段です。
企業名だけでは覚えにくくても、キャラクターは記憶に残ります。硬い企業イメージをやわらげ、接点をつくる。堅実さが求められる部品メーカーにとって、これは戦略的な選択です。
採用の「最初のふるい」を通過するために
どれだけ待遇が良く、技術が優れていても、この最初のふるいで落ちれば検討の土俵にすら乗りません。
技術デモやキャラクターは、このふるいを通過するための投資だと解釈できます。採用は認知の入口で決まる——BtoBメーカーが直面する現実に、同社は早くから手を打ってきたといえます。
予算がなくてもできること
ロボット開発のような投資は、中小企業には現実的ではありません。しかし「翻訳する」という発想自体は予算を要しません。
自社の部品が使われている場面を写真で示す。その部品がないと何が困るのかを一文で書く。工場見学の動画を撮る。
専門外の人が一目で理解できる形に置き換えられているか——問うべきはそこだけです。
キャラクターを使うときの注意
BtoB企業がキャラクターに取り組むとき、つまずきやすい点が3つあります。
① かわいさが目的になってしまう——反応が取れる絵柄を追ううちに、事業と無関係な記号になります。思い出してほしいのは社名であって、キャラクターではありません。
② 事業と結びつく必然性がない——村田製作所の例が機能しているのは、ロボットが自社技術そのものの実演になっているからです。技術と無関係なマスコットでは、認知は増えても理解は増えません。
③ 運用が続かない——キャラクターは、登場し続けて初めて記憶に残ります。年に一度しか出てこないなら、制作費は回収できません。
この3つを裏返すと、条件はこうなります。自社の強みを実演していること、担当者が代わっても続く形になっていること、出続ける場所が決まっていること。
絵をつくることより、この3つを先に決めるほうが重要です。

まとめ
村田製作所の事例が示すのは、見えない価値には、見える形の翻訳が要るということです。
自社の技術を、専門外の人が一目で理解できる形に置き換えられるか。BtoB企業のブランディングは、この翻訳作業に尽きるのかもしれません。
真のブランディングは、正しいブランド理解から
“なんとなく”を、言語化する資料集。
ブランディングの基本と進め方を、実務で使える形にまとめました。
読むだけで、終わらせない。



