
“バズ”より“居心地”を。
Z世代が本当に求めるもの。
━━━━━━
SHIBUYA109 lab.が発表した「トレンド予測2026」のキーワードは「アテンション・デトックス」。情報と刺激にあふれた毎日に少し疲れたZ世代が、狭く深い“界隈”の中に心地よさを求める——その価値観の変化は、ブランドの向き合い方そのものに見直しを迫ります。
「アテンション・デトックス」というキーワード
この予測は、SHIBUYA109 lab.が持つ around20(15〜24歳)の女性401名のネットワークへの調査をもとにしています。SNSのタイムラインを流れ続ける情報、終わりのない“映え”競争、無数のおすすめ——そうした注目(アテンション)の洪水に疲れた若者たちが、意識的に情報や刺激を“デトックス”し、心地よくいられる場所を選び取ろうとしている、という洞察です。
具体的なトレンドにもその傾向がよく表れています。確実においしいと分かっている店を選ぶ「うま確フード」、推しや特定のテーマでつながる少人数のオフライン体験、あえてスマホを手放してリフレッシュする旅、トレカ文化から派生した手帳やグッズのデコレーション、そして平成レトロなアイテムやキャラクターへの愛着。いずれも「不特定多数に向けて目立つ」より、「自分と、近い誰かが心地よい」ことを優先する志向です。
市場としての存在感も増している。日本のZ世代は約1,800万人(人口の約15%)、世界では約20億人を占める。米国ではZ世代が消費の約40%を左右し、家族の購買決定の約70%に影響するとされ、少子高齢化の進む日本でも今後の消費の主役と目される。SHIBUYA109 lab.は15〜24歳(around20)に特化し、約1,000人の若者と日常的に接してその価値観を捉えている。

背景にあるのは、「常時接続」への静かな反発です。四六時中つながり、誰かと自分を比較し続けることに疲れた世代にとって、心地よさとは“量”ではなく“質”——たくさんの人に見られることより、わかり合える少数といられること。消費すること自体より、自分の手で何かを完成させる達成感です。「映える」より「沼れる(深くハマれる)」、「フォロワー数」より「界隈での居場所」。この価値観の転換を理解せず、従来どおり露出量や話題量だけを追い続ければ、ブランドはかえって“疲れさせる側”として敬遠されかねません。
Z世代に共感されるブランドの条件

こうした価値観の変化は、ブランドにとって「大きな声で目立てば伝わる」という時代の終わりを意味します。注目を奪い合う競争から一歩引き、生活者が心地よくいられる“界隈”にそっと溶け込み、信頼を積み重ねること。それが共感の起点になります。
■主役を譲る
ブランドが前に出すぎず、ユーザーの「好き」や自己表現を後押しする“伴走者”になる。広告の主語を「私たち」から「あなた」へ移す。■余白を残す
作る・カスタマイズする・参加するための余地を設計し、共創の喜びを手渡す。完成品を一方的に届けるのではなく、続きを委ねる。■本音で語る
作り込まれた完璧さより、等身大で誠実なコミュニケーションが信頼される。失敗や舞台裏を見せられる透明性が、かえって距離を縮める。
ブランドは「目立つ」より「居心地」で選ばれる

アテンション(注目)の獲得を競うマーケティングは、皮肉にも、注目に疲れた世代から静かに距離を置かれ始めています。インフルエンサーを起用して一気に拡散する、派手なキャンペーンで話題をさらう——そうした“瞬間最大風速”型の施策は、刺さる相手が確実に狭まっているのです。
代わりに支持を集めているのは、小さなコミュニティの一員として受け入れられ、「ここにいて心地よい」と感じさせるブランドです。たとえば、ユーザー同士が交流できる場を丁寧に育てる、推し活を応援する立場に徹する、過剰な通知や売り込みを控える——こうした“引き算”の姿勢が、結果的に長く愛される関係をつくります。
“界隈”に選ばれるブランドの実践
共感を集めるブランドには、いくつかの共通点があります。商品を売り切って終わりにせず、ユーザーが自分流にデコレーションしたり組み合わせたりできる“余白”を残すこと。SNSでは公式が前に出すぎず、ユーザーの投稿や推し活を丁寧に拾って紹介すること。新商品の連打や過剰なセール通知を控え、ファンが疲れない“ちょうどいい距離”を保つこと。平成レトロなアイテムやキャラクターへの根強い人気が示すように、Z世代は「懐かしさ」や「安心感」にも強く反応します。流行を仕掛ける側に回ろうとするより、生活者がすでに心地よいと感じている文脈に、敬意を持って静かに参加する——その姿勢こそが、狭く深い“界隈”の中で支持を広げていきます。
まとめ:共感は「与える」ものではなく「育てる」もの
Z世代に共感されるブランドとは、流行を追いかけるブランドではなく、生活者の価値観に誠実に寄り添うブランドです。アテンション・デトックスの時代に問われるのは、ブランドの“熱量”ではなく“距離感”の設計だといえます。どれだけ近づき、どれだけ余白を残し、どれだけ静かに寄り添えるか。その繊細なバランス感覚こそが、これからの共感を育てる鍵になります。流行のキーワードを追うのではなく、その奥にある「疲れ」と「居心地への希求」を読み取ることが、ブランドに求められています。
真のブランディングは、正しいブランド理解から
“なんとなく”を、言語化する資料集。
ブランディングの基本と進め方を、実務で使える形にまとめました。
読むだけで、終わらせない。



