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鳩居堂(きゅうきょどう)

  • 匂い

銀座や京都の街角で、ふと甘く澄んだ香りに足を止めた経験はないだろうか。鳩居堂(きゅうきょどう)は、その「香り」そのものを三百六十年余にわたりブランドの核としてきた、日本でも稀有な香舗である。
≪注意書き≫本記事は各ライターによる情報収集によって作成されているため、主観や意見、事実と異なる文言が含まれている可能性があることをご了承ください。
背景
鳩居堂は1663年(寛文3年)に薬種商として京都で創業したと伝わる。薬種と香の原料が共通することから、やがて薫香や線香の製造を手がけるようになり、書画用品や和紙製品へと取扱いを広げていった。明治期には宮中に伝わる合せ香の調合法が当主に伝授されたとされ、香の知と技が代々受け継がれてきた。視覚や言葉ではなく、目に見えない「匂い」を生業の中心に据え続けてきた点が、この老舗の出発点にある。
戦略意図
多くのブランドがロゴや色、言葉で記憶を競うなか、鳩居堂は嗅覚という最も原始的で言語化しにくい感覚を資産に選んだ。香りは図像のように模倣されにくく、調合の秘伝として競合との差を保ちやすい。線香、匂い袋、防虫香といった商品群は、用途こそ異なれど「鳩居堂らしい香り」という一本の軸で貫かれ、触れた人の記憶に静かに刻まれていく。模倣困難な体験そのものを、ブランドの堀としているといえる。
表現意図
近年は香りの老舗が連携する街歩き型イベントなどを通じ、調香や匂い袋づくりといった「体験」として香を現代へ翻訳する試みも見られる。買って終わりではなく、自らの手と鼻で香を確かめる時間を設計することで、老舗の記憶を次の世代へ手渡そうとしている。香りという消えゆくものを、あえてブランドの中心に置き続ける姿勢そのものが、鳩居堂の表現意図を物語っている。