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ダイソン株式会社(dyson)

  • ブランド体験
背景
技術的に成熟し尽くしていると思われていた家電業界に、圧倒的な技術力と高いデザイン性を持って彗星の如く参入したダイソン。
徹底的なプロダクト重視の姿勢と消費者のインサイトを鋭く見抜いた製品は競合商品に比べ3倍近い高価格を可能にし、独自のダイソン市場を創り上げました。
ブランド・アイデンティティ
ダイソンと聞けば、誰しもがあの力強いコピーとともに、サイクロン式掃除機を思い浮かべるのではないでしょうか。
従業員の三分の一をエンジニアが占めるダイソンでは、「発明と改善がダイソンのすべてです」という創業者ジェームズ・ダイソン氏の言葉の通り、製品を開発するのではなく、新しい技術を開発し続けるその考え方に基づく徹底した技術志向こそが、ダイソンの強みでありブランドアイデンティティです。
購入/体験前(Before)
ダイソン氏は「技術が優れていれば、わざわざブランディングをしなくても良い」と語っていますが、ダイソンは巧みな「自社の技術価値を伝える」発信を行っています。
「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」の言い切り型の力強いメッセージとともに、ただ製品の技術のみにスポットを当て、製品の優位性を語る淡々と低いトーンのナレーションが流れるCM。自社技術への自信に満ち溢れた語りと、これまでの既存商品ではあり得なかった独自的なデザインの製品のビジュアルは、「発明と改善」を繰り返す「技術志向のブランド、ダイソン」として消費者に強烈な印象を与えました。
この急速な認知を獲得したサイクロン式掃除機のCMは、まさにダイソンのブランドアイデンティティそのものを表したと言えるでしょう。

購入/体験時(Experience)
「製品にとって重要な部分はすべて内製化したい」というダイソンの思いは製品開発に限ったことではありません。消費者と接点をもつ大切な場所として、売上上位の家電量販店には、自社の販売スタッフを派遣しています。もちろん店舗の中の売場づくりも家電量販店任せにはしません。徹底的に消費者を理解し、どうやって伝えるかに競合の何百倍もこだわるダイソンは、売り場における商品コピーの見せ方から什器の高さ、大きさまでカスタマイズしてつくり、さらには顧客へのノベルティに至るまで、社内でデザインしているのです。
さらに世界初の旗艦店として2015年に誕生した「Dyson Demo表参道」では、ダイソン製品がアート作品のようにディスプレイされ、訪れた人は圧倒的なダイソンの世界観のなかで、さまざまな製品のテクノロジーを体感できます。
また百貨店内にヘアスタイリングのサービスを行うサロン、「ダイソンヘア」をオープンするなど、リアルな体験を顧客に提供する一方で、2021年11月にはオンライン体験プラットフォーム「Dyson Demo VR」を発表。ダイソンの製品やテクノロジーを顧客が自宅からでもオンライン体験できるサービスを開始しました。
このようにダイソンは、チャネルを超えて顧客に独特の体験を提供しています。そこには自社製品の技術力や高いデザイン性、すなわちブランドアイデンティティの普及に全社を挙げて重点的に注力している姿勢がうかがえます。

購入/体験後(After)
ダイソンはユーザーサポート制度にも力を入れていて、製品保証や修理サービス、オンラインサポート制度などの機能的なサポートと並行し、ユーザー登録者向けに限定モニターキャンペーンやイベントなどを実施しています。リピートやほかの製品シリーズの追加購入につなげ、顧客のロイヤリティを高めているのです。
またダイソンの製品はその高い性能を発揮するために、ユーザー自身のメンテナンスも欠かせません。ダイソンは商品ひとつひとつにQRコードを割り振り、製品とユーザーを紐付けて登録させることで、カスタマイズされたメールマガジンの配信をおこなっています。例えばサイクロン式掃除機を購入したユーザーには、登録後1ヶ月を過ぎた頃にフィルター掃除のタイミングにあわせ、メンテナンスの方法をお知らせするのです。

掃除機から空気清浄機、ドライヤー。ブランドイメージを一貫させた製品で「ダイソンらしい」という唯一無二のポジションを築き上げたダイソン。IOTへの関心が高まる中、ダイソンはIT面での強化に力を入れています。マーケティングサイドからの発想による製品開発ではなく、新しい技術を作った上で、必要な製品を作り上げ、世の中の課題を解決していく。これからのダイソン製品に私たちが目が離せないことは確かです。